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カルティエ タンクが初めて発表されて以来、何年にもわたって実にさまざまなバリエーションやサブバリエーションが誕生したが、。

カルティエは、長年にわたりオープンワーク仕様の懐中時計・腕時計を膨大な数販売してきたが、オープンワークのタンクの登場は、2004年に発表されたタンク ルイ カルティエ ノクタンビュール(コレクション・プリヴェ・カルティエ・パリ、通称CPCPの一部)までなかった。その後、2013年にタンク MC スケルトン、2014年にはタンク LC サファイア スケルトンが発表され、いずれも高い評価を得て大成功を収めている(その年にはアイコニックなクラッシュのスケルトンバージョンも加わり、同様に評論家のあいだで話題となったが、もちろんそれはタンクではない)。タンクの誕生100周年を記念して、かなりの数の新作が発表されているなか、今回は1921年にカルティエが初めて販売したタンクの初期モデル、タンク サントレ初となるスケルトンバージョンを紹介しよう。

タンク サントレ スケルトンは、史上3番目となるオープンワークムーブメントを搭載したタンクである。

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タンク サントレは長年にわたり、いくつかの異なるバリエーションを発表してきたが、これまでにその超劇的に細長いケース(“サントレ”とは、曲がっている、または湾曲したという意)にオープンワークキャリバーを収めたことはなかった。その理由はおそらく、美しい外観の効果を得るために、ケースによくフィットし、ケースの湾曲に沿う長方形のムーブメントが本当に必要だったからだろう。それ以前のモデルでは、おそらく丸型ムーブメント、またはムーブメントサプライヤーによる既存のストックから作成された、標準的なレクタンギュラー型またはトノー型ムーブメントを用いていたのだろう。このような極端なムーブメント形状は、どのムーブメントサプライヤーのカタログにも含まれていなかっただろうし、ひとつの時計のために生産するには、おそらく法外的に高価だったと思われる。しかし新しいタンク サントレ スケルトンは、この目的のために特別に意図されたムーブメントを搭載しており、供給キャリバーよりもはるかに満足のいく結果を得ることができた。“サントレ”とは曲がった、湾曲したという意味で、ケース形状のことを指している。1920年代のサントレのオリジナルバージョンでは、7、8、9リーニュのムーブメントを搭載した比較的長いモデル、もしくは小振り(最も長いケース寸法を越えて)なモデルに対応する、いくつかの異なるムーブメント径が用意されていた(なお、リーニュとは伝統的な時計製造における単位のことを指す。1リーニュは約2.2558mmに相当し、この単位は現代の時計製造、そしてボタンやリボン作りにも生かされていた)。またヴィンテージサントレには、非常に特徴的なミニッツトラックがあった。ヴィンテージのカルティエ タンク サントレ、1921年製。

ミニッツトラックは基本的に改良された長方形だ。写真のようにオープンワーク加工されたサントレ(Cal.9917 MC)のために製造されたムーブメントは、このミニッツトラックを手巻きムーブメントの構造基盤として使用している。

一般的に、カルティエはオープンワークムーブメントをカスタム(クラッシュのスケルトンバージョンは、私が今まで見た腕時計のなかで最も魅惑的なもののひとつである)して、デザイン的に優れたものを作りあげている。結果サントレ スケルトンのコンポーネント配置は、論理的で美しいものとなっている。すべてはミニッツトラック型の上部ブリッジ(裏蓋から見える部分。時計技師にとって、ムーブメントの裏側から見える部分が上部であることをお忘れなく)と、文字盤を兼ねた地板によって固定されている。ゼンマイ香箱が上部の主な要素で、中央にメインのムーブメントと針、6時位置にテンプを配している。これはコルム ゴールデンブリッジやJLCのCal.101などのムーブメントに見られるのと同じ、直列構造である。文字盤のエレメントをムーブメント構造と一体化させることは、カルティエのモダンなオープンワークウォッチのトレードマークでもある(例えば、タンク MC スケルトンは、ダイヤル側のムーブメントプレートの12、3、6、9時位置がそれぞれローマ数字の形をしている)。

表側のゼンマイ香箱と文字盤。手前は巻き上げや時刻合わせを担うキーレス部分。テンプとヒゲゼンマイ、レバー、ガンギ車は、テンプ右側にある独立したハの字型のブリッジの下にある。

ケースサイズは縦46.3mm×横23mm×厚さ7.96mmとかなり縦長だが、湾曲されたケースとムーブメントのおかげで装着性はかなり高い。最初の取材でお伝えしたようにサントレ スケルトンは、ここで掲載しているピンクゴールド、プラチナ、プラチナ&ダイヤモンドの3種類で用意される(PGとプラチナがそれぞれ100本、ダイヤモンドセットが25本だ)。PGモデルの価格は6万1000ドル(編集注記:当時の販売価格は税込712万8000円)とかなり高価だが、カルティエのより高級なオープンワークタンク(サファイア スケルトン製)の価格とほぼ同じである。最終的な価格設定には多くの要素が絡んでいるが、250本の時計にしか使用されない、単一モデル専用ムーブメントにプレミアを期待するのは妥当だろう。

ご覧のように、ラグからラグまでのサイズが46.3mmであるにもかかわらず、手首の上では非常にエレガントな印象を与えてくれる。もちろん、過去100年間に製造されたわずか4本のオープンワークタンクのうちのひとつを着用するという楽しみ方もある(これが事実であることに驚かされるが、カルティエには確認済みだ)。本作、オープンワークのクラッシュ、そしてタンク サファイア スケルトン、この3本をローテーションで持っていたら、超高価だが楽しめるだろう。

タンクの詳細はカルティエ公式ウェブサイトをチェックだ。

本記事の以前のバージョンでは、最初にスケルトン化されたタンクが、“タンク MC スケルトン”であると誤って記述されていた。カルティエの著名なコレクターであり専門家であるジョージ・クレイマー(George Cramer)氏の計らいにより、2004年に発表された“タンク ルイ カルティエ ノクタンビュール”こそが最初のスケルトンモデルであると、メールで教えてくれた。

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ロレックスの最高峰に立つ、3・6・9インデックスを備えたエクスクルーシブなサブマリーナー。

いつしか時計オークションの中心的存在として注目されるようになったヴィンテージロレックス。

デイトナほどではないにせよ、サブマリーナーにおいても、ごくまれに例外的なモデルが出品されることがある。オークション史上最も高値をつけたサブマリーナーは、2018年6月、クリスティーズの時計オークションに出品された、エクスプローラーをほうふつとさせる3・6・9のアラビアインデックスダイヤルのRef.6538だ。重要なパーツであるベゼルがなく、さらにダイヤルの劣化も激しく、お世辞にも褒められるコンディションではなかったにもかかわらず、106万8500ドル(当時の日本円で約1億1860万円)という脅威的な記録を残した。

“億”超えを果たしたエクスプローラーダイヤルのRef.6538

2018年の1月に開催されたクリスティーズオークションで106万8500ドル(当時の日本円で約1億1860万円)という落札価格をマークした3・6・9のアラビアンインデックスダイヤルのRef.6538。©️Christies

ヴィンテージロレックスに明るい方ならご存じだと思うが、Ref.6538といえば、映画『007』シリーズで初代ジェームス・ボンドがタキシードに合わせていた(と目されている)、通称“ボンドサブ”と呼ばれるコレクターズアイテムである。このモデルは1955~59年頃に製造されたという説が有力で、フランス語で特許を意味する“BREVET”が入る8mm径のリューズをはじめ、サブマリーナーが作り出した特徴的なディテールを散見できる。実際にダイビングで使われた個体が多いことや、夜光塗料にラジウムを使用していたケースが多いため、コンディションのいい個体を探し出すことは困難を極めるものの、市場での価格については仮に状態が悪かったとしても少なく見積もっても2000万円はくだらない。

そんなRef.6538のダイヤルバリエーションのひとつに、エクスプローラーと酷似した3・6・9のインデックスを持つダイヤルが存在する。オンライン上で目にすることは可能かもしれないが、実機を手に取ること、ましてや商談までたどり着くことは、いまやほぼ不可能に近いモデルとしてコレクターに知られている。サブマリーナーのコレクターは世界中に大勢いるわけだが、それゆえこのモデルを所有するオーナーはごくわずか。だからこそ、クリスティーズのオークションで1億超えという記録が生まれたのである。

Ref.6200を中心にしたエクスプローラーダイヤルの勢力図

エクスプローラーダイヤルを持つRef.6200。2013年11月に開催されたオークションで、48万5000スイスフラン(当時の日本円で約5190万円)で落札された。©️Christies

そもそもエクスプローラーダイヤルを備えたサブマリーナーとは、一体どんな背景や価値を持つモデルなのか? 謎の多いモデルであるため、諸説を交えて概要を紹介しておこう。

該当するモデルはいくつかあるが、最も有名なのは“キング・オブ・サブマリーナー”と呼ばれるRef.6200だろう。製造期間は1954~55年で、300本ほど製造されたと噂されている。そのすべてがエクスプローラーダイヤルであることに加えて、8mm径のリューズを初採用し、サブマリーナー史上初めて200m防水を実現したモデルとしても知られており、ダイヤルは5種類近いバリエーションがある。

こちらはエクスプローラーダイヤルのRef.5513。2023年5月のオークションで、5万6700スイスフラン(当時の日本円で約870万円)で落札された。

このほか1950年代のサブマリーナーでは、Ref.6538と5510でも一部の個体でエクスプローラーダイヤルが確認されているが、特に後者は幻級のレアさを誇るという。1960年代前半に製造されたRef.5512や5513のエクスプローラーダイヤルも大変魅力的なコレクターズアイテムだ。どちらもさまざまなダイヤルのバリエーションがある。エクスプローラーダイヤルであることに加えて、夜光塗料にトリチウムを使用した証だとされる“アンダーバー”の表記や“PCG(ポインテッドクラウンガード)”と呼ばれるリューズガードなど、この時代ならでは魅力的なディテールを備えている。どちらも希少性は非常に高く、並のポール・ニューマンモデルの比ではない。それゆえ“サブマリーナーの終着点”にあたるコレクションとして探し続けているコレクターは多い。

国内のメガコレクターが所有する驚愕のRef.6538

いよいよ本題に入ろう。ここで紹介するRef.6538は、日本有数のヴィンテージロレックスのメガコレクターが所有するコレクションであり、あらゆる点で前述のRef.6538を上回る、まさに奇跡のような1本だ。この個体を販売した国内有数のヴィンテージウォッチ専門店リベルタスのスタッフ、中嶋琢也氏は次のように語る。

「普通のボンドサブなら世界中探せば見つかると思いますが、エクスプローラーダイヤルとなるとまったく話が違ってきます。Ref.6538のエクスプローラーダイヤルは、Ref.6200やRef.5510と違い、防水表記がレッドで記されている(レッドデプスと呼ばれる)ため、瞬時に見分けられます。数年前、香港と国内の有力コレクター数名が当店に集まる機会がありました。そのときもRef.6200は見ることができましたが、Ref.6538のエクスプローラーダイヤルは誰も持っていませんでした。ちなみに該当するすべてのリファレンスを含めて、これまでにうちが扱ったエクスプローラーダイヤルのサブマリーナーは10本にも満たないと思います。この個体はコンディションのよくないものが多いサブマリーナーのなかでは上々の状態だと思います。もともと、この個体は国内のコレクターから出てきたものですが、当時の時点でポール・ニューマンモデルよりも遥かに高価でした。その価格に驚いたコレクターが多かったことをよく覚えています。それでもオーナーの背中を押して紹介した理由は、この機会を逃すと買えないモデルだったからです。例えば、手巻きデイトナなら資金力があれば、ある程度のコレクションを揃えることは可能だと思いますが、サブマリーナーのコレクターズアイテムとなると本当に数が少ないため、収集の難易度がまったく違います。しかもRef.6538のエクスプローラーダイヤルになると、その希少性はトップクラスですね」。

中嶋氏の話からも察するに、世界のどこかにまだ見ぬRef.6538のエクスプローラーダイヤルが眠っているのかもしれない。ただし、その頂まで登ることは、世界的なコレクターでさえ諦めざる得ないほどハードルが高いことは確かなようだ。

エクスプローラーダイヤルが持つ独自性
多くのヴィンテージロレックスのコレクターにとって、エクスプローラーダイヤルのサブマリーナーは憧れ以外の何物でもない。つまるところ、その魅力の本質はどこにあるのだろうか。中嶋氏は言う。

「サブマリーナーに限らず、ロレックスのマーケティングはずば抜けていて、いつの時代も他社をリードしてきました。そして、どのモデルも新しい時代を創ろうというエネルギーが満ち溢れてるように思えます。サブマリーナーも然りで、シンプルなドレスウォッチが主流だった1950年代に、スポーツウォッチ、しかもどこにもない独自のデザインを生み出したことには先見性が感じられますよね。最大のマーケットであった北米を中心に、出荷国ごとに時計のデザインをアレンジしていたこともロレックスの見事な戦略でした。 ロレックスの3・6・9のダイヤルはどれも人気があります。真相は定かではありませんが、エクスプローラーダイヤルはイギリスでとても人気があって出荷されていたと言われています。エアキングのRef.5500のエクスプローラーダイヤルはその典型例ですし、Ref.5512やRef.5513のエクスプローラーダイヤルもこの流れを汲むモデルだという説が有力です。このようなバックストーリーもおもしろいですが、エクスプローラーダイヤルのサブマリーナーの魅力は、その希少性の高さはもちろんのこと、独自性のあるデザインに集約されていると思います。だからこそ多くのコレクターが魅了されるのではないでしょうか?」

かつては希少なヴィンテージロレックスの多くが集まっていた日本のヴィンテージマーケット。現在、そのような時計の多くは海外のコレクターが所有していることが多いが、日本国内のコレクターのなかにも、海外勢に負けず劣らずの希少な逸品を所有しているオーナーは少なくない。実はほかにも希少なヴィンテージロレックスを撮影しているが、それはまた別の機会に紹介しよう。

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これはベル&ロスが“未来に向けた時計づくり”を目指した最新モデルだ。

視認性、機能性、防水性、高精度の4つの基本理念を掲げるベル&ロスから、ブランドの代表作とも言えるBR 03シリーズをベースにした限定スケルトンモデルが登場した。本作は、一目でベル&ロスとわかる特徴的なスクエアケースをファセット加工し、文字盤とムーブメントの主要部分を立体的にスケルトナイズしているのがポイントだ。

新作は、敵からのレーダーに探知されないよう設計されたステルス航空機をもとにしている。ステルスの“見えないものを見る”というコンセプトをさらに推し進めるべく、文字盤をスケルトンにし、またキャリバーには目を見張るような3Dスケルトン加工を施した。

42×43.7mmのマットブラックカラーのケースは、高い耐傷性を持つセラミック製。針、リューズ、ベルトに至るまですべてブラックで統一し、マッシブな仕上がりにしている。ケース内にはベル&ロス自社製の自動巻きBR-CAL.383を収め、199万1000円(税込)で提供される。

ファースト・インプレッション

この新作は“サイバーシリーズ”に属すると言えば、マニアはピンとくるだろうか? 2020年に投入された同シリーズは、立体的なスカルを文字盤全面に配した、大胆でアヴァンギャルドな限定生産モデルを展開している。これまでに計8本のスカルモデルが発売されているが、今回の新作にはスカルの姿はない。

しかし私は、今回のモデルを見たとき、いままでスカルの背面でクロスしていた骨だけがそのまま残ってスケルトナイズされたように感じた。スカルの面影がわずかに残っているのだと。

本作は“未来に向けた時計づくり”というビジョンのもとつくられており、人気のBR 03ラインが持つ力強さとアイデンティティはそのままに、そのアイコニックなデザインを一新するのが目的だという。その結果BR 03のデザインを、サイバーシリーズのこれまでのグラフィックと未来的なコード(スケルトン)と組み合わせることにしたと言うが、なるほど、これまでにないルックスなのに雰囲気はサイバーシリーズそのままだ。私が感じた面影はそれだった。ブランドが目指したコンセプトは成功していると思う。

未来に向けた時計づくりのもと、今後ベル&ロスからは何が発売されるのか、楽しみで仕方ない。ちなみに、ベル&ロスが目指す未来とは異なり恐縮だが、私は機能はシンプルに、デザインは派手にという精神でいるため、今後も私の精神に沿ったスカルモチーフモデルを出して欲しいところだ(たまにでいい!)。

基本情報
ブランド: ベル&ロス(Bell & Ross)
モデル名: BR 03 サイバー セラミック(BR 03 CYBER Ceramic)
型番: BR03-CYBER-CE

直径: 42×43.7mm
ケース素材: マットブラックセラミック
文字盤: スケルトン
インデックス: 風防の下にブラック 光沢処理を施したメタルインデックス
夜光: グレーのスーパールミノバ(針のみ)
防水性能: 50m
ストラップ/ブレスレット: ブラックラバーストラップ、マットブラックPVD加工のステンレス製ピンバックル

ムーブメント情報
キャリバー: BR-CAL.383
機能: 時・分
パワーリザーブ: 約48時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 25
クロノメーター: なし
追加情報: 製造ムーブメント5年保証

価格 & 発売時期
価格: 199万1000円(税込)
発売時期: 発売中
限定: あり、世界限定500本

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ジン クラシックな103クロノグラフに手巻きムーブメントを載せてアップデート。

ジェームズが先日紹介したU50ダイバーズに加えて、ジャーマンウォッチブランドのジンが伝統にインスパイアされた103.St.Ty.Hd クロノグラフをリリースした。これは20年ぶりとなる手巻きの103クロノグラフである。

新しいジン 103.St.Ty.Hd クロノグラフは、直径41mm、厚さ14.8mm(ラグ幅20mm)のステンレススティール製ケースであり、200mの防水性を備えている。セリタ製SW510の手巻きキャリバーを搭載しており、2万8800振動/時で作動し、約58時間のパワーリザーブを確保している。ブラック文字盤にはアプライドインデックスが配され、伝統的な3レジスターのレイアウトと、クロノグラフ秒針のディープレッドアクセントが特徴だ。またブラックのパイロットベゼルの12時位置には夜光もあり、インナーベゼルにはタキメータースケールが刻まれている。

ジン 103.St.Ty.Hdは世界限定1000本で、価格は66万円(税込)である。

我々の考え
新しい103クロノグラフは、古典的なジンによる堅実なアップデートのように見える。ブラックのダイヤルとベゼルに対して、赤のアクセントがよく効いている。完璧な実用性を感じさせる、これこそ完璧なジンである。

サイズはパイロットウォッチに求められるものであり、大きくても圧迫感はない。またドイツのDIN規格(Deutsches InstitutfürNormung)に準拠した耐磁性と防水性など、ジンのツールウォッチが人々に愛される、すべての要素を備えている。さらにアクリル風防を採用し、昔ながらの103にオマージュを捧げている。

アップデートされたU50のラインナップと並んで、新しい103.St.Ty.Hdクロノグラフはヘリテージインスピレーションを見事に備えた時計であり、ジン愛好家が楽しめるのではないかと思う。

sinn 103 chronograph 2024
ジン 103.St.Ty.Hd。41mm径×14.8mm厚(ラグ幅20mm、ラグからラグまでは47.5mm)。ステンレススティール、200m防水。セリタ製手巻きCal.SW510M、2万8800振動/時、約58時間パワーリザーブ。世界限定1000本、希望小売価格は66万円(税込)。

時計収集の世界に長くいればいるほど、より初期に作られた時計、特に“近代”以前のモデルに興味を抱くようになる。

なぜかというと、例えばロレックス、オメガ、ホイヤーなどが1950年代から60年代にかけてはサブマリーナー、スピードマスター、カレラなどの時計をコレクションとして命名し、明確な区分を設け始めたタイミングであるからだ。しかし、これらの偉大なコレクションが登場する前に作られた時計は、存在のほとんどが知られていないだけでなく、そのピュアなデザインもまた魅力的なのだ。この記事では、フィリップスのジュネーブ・ウォッチ・オークションIIに出品されたロレックス製のコンプリケーションウォッチ全4本を紹介する。しかし、どれもサブマリーナー、GMTマスター、デイトナ、エクスプローラーの範疇には含まれない。だが、これらの時計には真の美しさが宿っている。

ロレックス Ref.3525 オイスター クロノグラフ
Rolex 3525
ロレックス Ref.3525はロレックス初の“オイスター”クロノグラフである。

 Ref.3525は、マーケットでめったにお目にかかれない時計のひとつである。本当にこの時計を理解しようとしない限り、その真価を見極めるのは難しい。Ref.3525はまた、オイスターケースに初めてクロノグラフを搭載したという点でロレックスにとって歴史的に重要な時計でもある。このリファレンスは1939年から1945年までの6年間しか製造されなかったが、フィリップスで見られるこの個体は、ここ数年で登場したイエローゴールドの時計としては間違いなく最高クラスの逸品である。

Rolex 3525
このRef.3525は、ケースに見られる見事な酸化が特徴的だ。

 おそらく新品時から研磨されていないと思われるこの時計は、ケースに深い酸化が見られる。洗浄や何らかの手入れをしてしまっていれば、この雰囲気はとっくの昔に失われていたに違いない。文字盤にプッシャー、リューズ、針、そしてオリジナルのイエローゴールドブレスレットまでもが新品同様で、さらに希少なブラックギルト文字盤が魅力を添えている。そうそう、この時計がジョン・ゴールドバーガー(John Goldberger)氏が執筆したロレックス本で紹介されていることはもう言っただろうか? そう、それほど素晴らしいものなのだ。事前につけられた予想落札価格は明らかにそのクオリティを反映している。フィリップスによれば、このRef.3525は20万スイスフランから40万スイスフラン(当時のレートで約2420万円から約4840万円)で取引されるはずだという。詳細はこちら。

 ちなみに、Ref.3525は実際に起こった“大脱走”で担った役割から、しばしば“捕虜(POW)”と称されている。

ロレックス パデローン Ref.8171 ステンレススティール製トリプルカレンダー ムーンフェイズ
Rolex 8171
スティール製のRef.8171は、世界でもっとも魅力的な時計のひとつである。

 ロレックスのフォーラムやマニュファクチュールの歴史に詳しい人たちはよく、トリプルカレンダーのムーンフェイズウォッチを復活させて欲しいと口にしている。ロレックスによるムーンフェイズ製造の歴史はそれほど長くないが、ムーンフェイズを搭載したふたつのリファレンス(ここで紹介するRef.8171と次の項目で紹介するRef.6062)は完璧に近かった。Ref.8171は、その薄型で大きなサイズ感から“パデローン”、あるいは“ビッグフライパン”と呼ばれることもある。まさに世界で最も魅力的な時計のひとつである。

Rolex 8171 Steel
これは、おそらく現存するRef.8171のなかでもっとも素晴らしい個体だろう。

 Ref.8171はスティール、ローズゴールド、イエローゴールドの3種類で展開され、総生産数はそれほど多くない。しかもスティール製はごくわずかしか存在せず、ポリッシュ仕上げが施されたり、修復されていない状態のものはほとんどない。このオーバーサイズなトリプルカレンダー ムーンフェイズの個体を熱心なコレクターにとっての“夢の時計”から“あがり時計”へと昇華させているのは、そのコンディションによるところが大きい。鮮やかなブルーのアクセントを添えた完璧なエイジングの文字盤と、シャープで鋭いケースエッジをご覧いただきたい。

Rolex 8171 Moonphase
Ref.8171は、ゴールドのムーンフェイズを備えている。

Rolex 8171 caseback
ケースバックに刻まれたロレックスの王冠にも注目。

 Ref.8171の良否を判断する方法のひとつが、裏蓋を見ることだ。裏蓋に刻まれたロレックスの王冠がまだはっきりと見える場合、その時計はあまり研磨されていないと言える。この個体では、王冠は深く刻まれており、この時計の全体的な品質を物語っている。このRef.8171の予想落札価格は35万から70万スイスフラン(当時のレートで約4235万円から約8470万円)で、スティール製ロレックスとしては高額だが、歴史、デザイン、希少性、品質を鑑みると平均的な6桁のデイトナをはるかに超える価値を持つ時計であることは間違いない。そして率直に言って、この時計はどんなデイトナよりもずっとクールだ。詳細はこちら。

 ちなみにクリスティーズは2013年12月に、同じようにポリッシュ仕上げが施されていないダイヤモンドマーカー付きのスティール製Ref.8171を114万ドル(当時のレートで約1億1230万円)以上で落札している。

ロレックス ステッリーネ Ref.6062 ピンクゴールド製トリプルカレンダー ムーンフェイズ スターダイヤル
Rolex 6062
ロレックスのRef.6062 ステッリーネは、ロレックス史上最高のデザインであると評価されている。

 上記のRef.8171の兄弟モデルであるRef.6062は、よりスタイリッシュなオイスターケースにまったく同じムーブメントとデイト表示を備えている。Ref.6062は1950年代初頭のわずか3年間しか製造されなかったが、ロレックスのデザインにおける絶対的な頂点のひとつと考えられている。

Rolex 6062
この貴重なピンクゴールドの時計は、“スターダイヤル”を備えている。

 この貴重なRef.6062は、ピンクゴールド製であること、そしてこのモデルが“ステッリーネ”と呼ばれる希少なスターダイヤルを備えていることでさらにその価値を高めている。この特別な個体は世界でもっとも完璧なヴィンテージ ロレックスのひとつであり、この個体は2004年以来、世界最高のコレクターによって暗い金庫にひっそりとしまわれてきた。それ以前は、この時計は最初の購入者の家族のもとでめったに使われない状態で保管されていた。

Rolex 6062
この非常に希少な時計には、オリジナルのピンクゴールド製ブレスレットも付属している。

 このステッリーネには、ケースとお揃いのピンクゴールドのブレスレットが付属している。このようなクオリティの時計は間違いなく高値で取引される。そう、ご想像のとおりだ。このピンクゴールド製Ref.6062 スターダイヤルの予想落札価格は50万から100万スイスフラン(当時のレートで約6050万円から約1億2100万円)で、スティール製のRef.8171よりもさらに高い。この素晴らしい時計の詳細はこちら。

 ちなみに地球上でもっとも魅力的な時計のひとつにSS製のRef.6062がある。2015年12月のHODINKEEコレクターズサミットで講演するジェイソン・シンガー(Jason Singer)氏とのTalking Watchesで、その一例が紹介されている。

ロレックス Ref.2737 レギュレーター ノンオイスター クロノグラフ
Rolex 2737
Ref.2737は珍しい非オイスターケースのクロノグラフで、レギュレーターを配したレイアウトのブラック文字盤が特徴的だ。

 Ref.3525のようにデイトナではないオイスター クロノグラフや、Ref.8171やRef.6062のようなトリプルカレンダー ムーンフェイズは、現在のロレックスにとっても十分に実現可能なものと思われる。だが、レギュレーター クロノグラフは今後もお目にかかることはないだろう。実際のところ、たいていの人々は、そもそもロレックスがレギュレーター クロノグラフを製造していなかったと考えているはずだ。しかしロレックスはそれを作り、ここにこうして存在している。Ref.2737は非常に希少な時計で、わずか12本しか作られなかったと思われる。この時計は1938年のもので、ヴィンテージ ロレックスの世界においては本当に特別なものだ。ここに見られるほかの初期ロレックスの時計と比較すると落札予想価格はやや控えめで、7万から10万スイスフラン(当時のレートで約847万円から約1210万円)である。ロレックスのこの見事なレギュレーター クロノグラフの詳細はこちら。

 ちなみに、ロレックスが早くからレギュレーターウォッチを発表していたのに対し、パテック フィリップは最近発表されたRef.5235Gまでレギュレーターモデルを発表していなかった。

最終的な感想
 私がこのような特別なロレックスのリストを作成したのは、Ref.6062のような時計を私が本当に大好きだからというだけでなく、ほかにどのような時計があるのかを紹介するためでもある。サブマリーナー、デイトナ、デイデイト、そして前世紀後半に作られたほかの時計が注目を浴びているからこそ、オイスターケースのスポーツウォッチよりも遥かに希少で美しいこれら初期の時計について、コレクターが十分な見識を得るためには長い年月を要することが多い。私たちにも責任はあるが、このような話をきっかけとして、より多くの人々に初期のモデルの素晴らしさに目を向けてもらえるのであればそれは大きな収穫だと思う。

 

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