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タイメックスの新しいジェームスブランド(The James Brand)とのコラボレーションもそうだった。

幸運なことに、私の世界では記事にそれ以上の理由は必要ない。

ジェームスブランドはこれまで関心の範囲外にあった。新しいアクセサリーの趣味に簡単に引き込まれるタイプとしては、幸運にも“Everyday Carry(EDC、日常的に持ち歩く小物や道具に熱中すること)”を回避してきた。2012年にオレゴン州ポートランドで設立されたこの会社を調べてみると、彼らのナイフやその他のアイテムには、今回のタイメックスにも反映されたよく考えぬかれた控えめなデザインが見られる。ナイフやマネークリップ、ペンなど、彼らの製品を深く掘り下げすぎて商品を買いたくなる衝動に駆られず、話題に集中しなければならない。今はただ、時計のためにここにいる。幸いにもこの時計はそれだけで十分に際立っている。


チタンは徐々に手ごろな価格の時計の素材として選ばれるようになった。かつては高級素材とされていたが、今では以前よりも身近になっている。長いあいだ、チタン製の時計にはあまり引かれなかったし、今でもスティールの重厚感を好んでいる。ただし多くの要件を満たしながら、つけやすくて耐久性のある時計をデザインする場合、チタンは理にかなっている。これがタイメックスとジェームスブランドが目指したものだと思う。しかし彼らはさらに1歩進んで、非常にリーズナブルな価格でグレード5チタンを採用したのだ。

この時計のケースは41mm径×11.5mm厚で、マットグレーのチタン製ケース、20mmのラグ幅、200mの防水性能を持つ。厚くなりすぎず、非常に標準的なケースサイズで多くの人々に受け入れられやすい。確かにチタンは少し軽量な素材だが、この時計の重さは120gで、私の持っているシチズン プロマスター スーパー チタニウム ダイバーズ(111g)ほど軽くは感じない。だがそれは必ずしも悪いことではない。先ほど述べたように、重量はしばしば高級感と結びつくため、この時計はそのバランスをうまく保ちながら、それでもチューダーのブラックベイ 58(145g)よりも軽い。
 特に印象的だったのは、チタン製ブレスレットの軽さと頑丈さだ。この価格帯(749ドル、日本円で約11万7000円)ではブレスレットの許容範囲が広く、軽いケース素材と相まって安っぽく感じることがある。しかしこちらのブレスレットは、しっかりとしたフィット感と信頼性の高いクラスプを備えながらも、手首にぴったりと沿い快適な装着感を提供していた。

確かにブレスレットのデザインは特に独創的ではないが、それに注力するのは無駄な努力だ。最初の印象では、ベル&ロスのブレスレットに似ているように見えたが、それは悪いことではない。一部の人にとっては、20mmのラグ幅からクラスプまでテーパーがかっていないことがマイナスかもしれない。ただ繰り返しになるが、私はまったく気にならなかった。
 この時点で、新しいタイメックスに対して少し物足りなさを感じているように聞こえるかもしれないので、ここでリセットさせてほしい。私はこの時計を本当に大好きだ。全体像を振り返ると、この時計は私にとって“ゴルディロックス”のような理想的なバランスを保っていると感じる。チタン製の時計でありながら軽すぎず、一方で素材のよさを感じられるほどに軽量だ。サイズも大きすぎないし、このGMTは価格に対してはかなり印象的だと思う。しかし、まだこの時計のふたつの際立った特徴であるデザインとムーブメントについて触れていない。

新しいタイメックス×ジェームスブランド GMTの全体的なデザインは、またしても静かな成功を収めている。ジェームスブランドがよく使用する大胆なライムグリーンの色を、ブランド名“JAMESº”のºを模したベゼル上の夜光 ポイントなどに使用。それ以外は、時計はマットグレーのチタンケースに合ったモノクロテーマを保っている。6時位置のロゴはホワイトで表現され、ベゼルはグレーとブラックで(昼夜の時間である)6時と18時で分けられており、またダイヤルはブラックにホワイトのインデックスを組み合わせている。
 いくつか調整を試みたかった(あるいは少なくともやってみた)点もあるが、749ドル(日本円で約11万7000円)で完璧な時計を期待するべきではない(それではチューダーやロレックスは商売上がったりになるだろう)。ベゼルの色の組み合わせは美しいが、実物や写真では純粋なブラックに見えることが多かった。この時計は“ペプシ”や“バットマン”としては機能しなかったかもしれないが、ベゼルの色使いが重要なのであれば、もっとコントラストを強くしてもよかったかもしれない。

同様に、ベゼル自体もGMTベゼルではなく、120クリックの逆回転防止ダイバーズベゼルである。これはコスト削減のためだと思うが、それで問題ない。一部の人たちと違い、私はGMTベゼルをあまり使わないので、代わりにGMT針と時間表示機能でタイムゾーンを管理している。幸いなことにベゼルをぶつけてしまっても(実際かなり頻繁に起こることがわかった。12時位置の円形マークが少しずれてイライラした)、それでも固定の24時間スケールが見返しリングの周りにある。インデックスと針に施されたスーパールミノバは24時間スケールを照らすには少し弱いと感じたが、秒針とGMT針に余光塗料が塗布されているので、暗闇でもGMTとして十分に使用できる。

タイメックスが採用した最大の成功は、ミヨタ 9075という“フライヤー”GMTムーブメントを搭載したことだ。私はGMTやトラベルタイムウォッチの大ファン(同僚でGMTの王様であるジェームズ・ステイシーにはおよばないが)だが、気づいたことがひとつある。GMT針を独立して設定する“コーラー”GMT、つまり時間を調整する際にGMT針を設定する必要があるものは、私のコレクションに長く残ることが少ないのだ。
 私の普段使いの時計はロレックス GMTマスター IIであり、ほかの時計を比較する際には常にそれを基準にしている。いくつかの点で、このタイメックスの時計はロレックスを上回る。わずかに薄く、価格が10分の1以下でありながら、素材の面ではより“プレミアム”だと感じる人もいるかもしれない。GMTムーブメントを搭載し、ロレックスと同様にリューズを1段引き出して時針を前後に設定することで新しいタイムゾーンに対応しつつ、GMT針でホームタイムを追跡できる。確かにケースと同様に、ムーブメントの仕上げはロレックスやチューダー、さらにはロンジンのスピリット Zulu Timeほどの高級感はない。パワーリザーブは約40時間であり、精度は日差-10~+30秒だ。しかし、この価格なら文句はない。

ブレスレットにはクイックリリース機能が付いており、さらにはピンバックルタイプのラバーストラップも付属。タイメックス×ジェームスブランド GMTには多くの魅力がある。ただ残念なことにこのモデルは限定版で、1000本だけに個別のシリアルナンバーが入っている(これもプレミアム感を与える要素のひとつだ)。もし私のように頻繁に旅行し、シンプルで手ごろな価格かつ信頼性のある時計を求めるのなら、この時計をすぐに手に入れるべきだと思う。私のコレクションのなかでもきっと頻繁に出番があることだろう。私が出合ったなかで最高の1000ドル以下の(もしかしたら2500ドル以下かもしれない)GMTだと言っても過言ではない。

タイメックス×ジェームス・ブランド GMT。Ref.TWG065500。直径41mm、厚さ11.5mmのグレード5チタンマットケース、ラグ幅20mm、200m防水。ブラック文字盤にプリントと植字のインデックス、インデックスと針にスーパールミノバ。時・分・センターセコンド、“フライヤー”または“トゥルー”GMT。120クリックの逆回転防止GMTベゼル。約40時間パワーリザーブを備えた“トゥルー”GMTのMiyota 9075自動巻きムーブメント。バタフライクラスプ付きクイックリリースチタンブレスレット、ピンバックル付きラバーストラップ付属。世界限定1000本(シリアルナンバー入り)。749ドル(日本円で約11万7000円)

G-SHOCKの5600/2100シリーズにレインボーレンガパターンを施した最新モデルが登場

虹色に輝く、G-SHOCKのアイコニックウォッチだ!

1983年に誕生した初代G-SHOCKから採用されていたレンガパターンが、2024年夏の新作として装いが一新した。今回は文字盤に蒸着でレインボーカラーをあしらった4型が追加された。このモデルは光の反射によりさまざまな色合いを見せるレンガパターンを特徴としている。

ベースモデルにはG-SHOCKの定番である5600シリーズとオクタゴンベゼルの2100シリーズを採用。どちらもG-SHOCK初号機のアイデンティティのひとつであるレンガパターンをあしらっている。5600シリーズは、レインボーカラーのグラデーション蒸着とブラックプリントでデザイン。2100シリーズには、シルバー蒸着にレインボーカラーを塗装し、レーザー処理で部分的に剝離させることでレンガパターンをデザインしている。
 メタルベゼルモデルのストラップと、DW-5600RWおよびGA-2100RWのベゼル&ストラップにはバイオマスプラスチックを使用。G-SHOCKの持続可能性に対する取り組みが感じられる。
 G-SHOCKの代名詞と言える耐衝撃構造や20気圧の防水性はもちろん、スーパーイルミネーターLEDバックライト、ストップウォッチ、タイマー、マルチアラーム、フルオートカレンダーなど、多彩な機能を備えている。電池寿命は約3年から5年と長く、実用性も申し分ない。
 ケースサイズは、5600シリーズが49.6×43.2×12.9mm(縦×横×厚さ)、2100シリーズは44.4mm径、11.8mm厚。価格はそれぞれ異なり、2100のメタルモデルが3万2450円、2100のカーボン樹脂モデルが2万900円、5600のメタルモデルが2万9700円で、5600のカーボン樹脂モデルが1万6500円(すべて税込)となっている。

ファースト・インプレッション

G-SHOCKからはほぼ毎年レインボーをまとったモデルが登場しており、もはや同カラーはブランドの十八番と言っても過言ではない(2023年のレインボーモデルの詳細はこちら)。今回は5600シリーズと2100シリーズというG-SHOCKのアイコニックなモデルをベースにしているため、ファンにとってはなじみ深く、それでいて新鮮なデザインに仕上がっていると感じる。
 あくまでもダイヤルのみにレインボーカラーを取り入れているのが魅力で、派手すぎず、でもしっかりと個性を主張している。光の反射により変化するレンガパターンは、見る角度によって多彩な表情を見せ、目を引くと同時に洗練されていると感じる。アナログの針と視覚的にインパクトが強い時計が好きな私はGA-2100RWが好み。メタル×レインボーの掛け合わせがスタイリッシュで、金属の冷たい質感とレインボーカラーの華やかさがマッチしていて、4型のなかでもいちばん好きなモデルだ。欲を言うと細い手首の私がよりつけやすいBABY-G(BGA-280シリーズとか)でもぜひ出して欲しいところ。
 視覚的な美観と実用性を兼ね備えたこのモデルは、時計ファンだけでなく、ファッションアイテムとしても多くの人々に愛されるだろう。なにより先例として取り上げた昨年のレインボーG-SHOCKはブレスレットもフルメタルの仕様のみで価格が8万円であったのに対し、新作はカーボン樹脂モデルが1万円台と大変手ごろな価格となっている。手の届くタフネスウォッチであるG-SHOCKの魅力が最大限生かされた新作だ。

基本情報
ブランド: G-SHOCK
モデル名: レインボー ブリック ウォール(RAINBOW BRICK WALL)
型番: GM-2100RW-1AJF、GA-2100RW-1AJF、GM-5600RW-1JF、DW-5600RW-1JF

直径: 49.3mm(GM-2100RW-1AJF、GA-2100RW-1AJF)、49.6mm(GM-5600RW-1JF、DW-5600RW-1JF)
厚さ: 11.8mm(GM-2100RW-1AJF、GA-2100RW-1AJF)、12.9mm(GM-5600RW-1JF)、13.4mm(DW-5600RW-1JF)
ケース素材: 鍛造ステンレス、グラスファイバー強化樹脂(GM-2100RW-1AJF、GM-5600RW-1JF)、グラスファイバー強化樹脂(GA-2100RW-1AJF、DW-5600RW-1JF)
文字盤: レインボーカラーのグラデーション蒸着
夜光: LEDライト(スーパーイルミネーター)
防水性能: 20気圧防水
ストラップ/ブレスレット: グラスファイバー強化樹脂
追加情報: 48都市のワールドタイム、100分の1秒ストップウォッチ、タイマー、時刻アラーム(GM-2100RW-1AJF、GA-2100RW-1AJF)、100分の1秒ストップウォッチ、タイマー、マルチアラーム、報音フラッシュ機能(GM-5600RW-1JF、DW-5600RW-1JF)



価格 & 発売時期
価格: GM-2100RW-1AJFは3万2450円、GA-2100RW-1AJFは2万900円、GM-5600RW-1JFは2万9700円、DW-5600RW-1JFは1万6500円(すべて税込)

オーデマ ピゲがカラフルなロイヤル オーク オフショアの新作を発表

37mm径のピンクゴールド製オフショアはちょっとよさそうだ。
 

“オーデマ ピゲが新しいロイヤル オークを発表”というタイトルや見出しは年に何度も書いているが、いかにクラシックなモデルであってもロイヤル オークに対する興味がやや薄れてきたのも事実だ。その一方で、37mm径のピンクゴールド(PG)製ロイヤル オーク オフショアなんてかなりクールじゃないだろうか?

自分でも感情をうまく言い表せないけど、このグレーのベゼル、なんとなく気に入ってるかも?
 夏の終わりが近づくこのタイミングで、オーデマ ピゲから新たなロイヤル オーク オフショアが3本追加された。まず最初のオフショアは、37mmのPG製ケース(厚さ12.1mm)にグレーのラバーベゼルの組み合わせだ。アイボリーのグランドタペストリーダイヤルにはPG製のインデックスが並び、グレーラバーストラップにはシャークスキンのようなモザイクパターンが施されている(以前のオフショア ミュージック エディションに使用されたものに似ている)。内部にはAPの自動巻きCal.5900が搭載されており、約60時間のパワーリザーブと2万8800振動/時(4Hz)の振動数を誇る。オフショアといえば、大きくてワイルドなモデルというイメージがあり、シルヴェスター・スタローン(Sylvester Stallone)のような手首の太さが必要だと思っていたが……このモデル、なかなかいい感じだ。価格は682万円(税込)である。

マークが今年初めにミラノですべてのオーデマ ピゲの新作を見たときに、43mm径のオフショアを撮影していた。
 次に43mm径(厚さ14.4mm)のオフショア オートマティックは、ステンレススティール(SS)製のケースに青いラバーベゼルとマッチするブルーのラバーストラップを装備している。新世代のスモークブルーのメガタペストリー(これは37mm径のモデルに見られるものより、グリッドが大きいことを意味する)と、70時間のパワーリザーブを持つ自動巻きCal.4302を搭載している。このモデルについてほかに特筆すべきことはあまりないが、ハンサムな見た目で完成度も高く、スモークブルーのダイヤルが伝統的なタペストリーに新たな魅力を加えていることは間違いない。“ブルーのロイヤル オーク”という発想自体は予測可能なものかもしれないが、この新しいオフショアを数カ月前に見て写真を撮ったマークは、「オフショアは自分の好みではないが、これはちょっとクールだと認めざるを得ない」と述べていた。私も同意見だ。価格は396万円(税込)である。

 最後に、同じタイミングで新しいロイヤル オーク オフショア クロノグラフも登場した。43mm径のSS製ケースにセラミック製のプッシャーとリューズを備えている。100mの防水性があり、大体の海洋(オフショア)での冒険に対応できるだろう。そしてスモークブロンズのメガタペストリーパターンにホワイトゴールド(WG)製のアプライドインデックスを採用している。内部にはコラムホイール式のフライバック・クロノグラフを搭載したAPの自動巻きCal.4401が内蔵されている。このクロノグラフはほかのモデルと比べて高級感があり、ブラウンのアリゲーターストラップが付属している。しかしもしあなたが陽気な性格の場合(もしくは汗っかき)、これらの新しいオフショアにはすべて追加のブラックラバーストラップも付属していることもつけ加えておこう。価格は599万5000円(税込)だ。

我々の考え
この新しいロイヤル オーク オフショアのトリオは、5月に発表された小振りなミニ ロイヤル オークほど業界の話題をさらうことはないかもしれない。しかしもしあなたがこの時期能動的に“夏”を楽しむタイプの人であれば、これらはフレンチ・リヴィエラ(南フランスの保養地として知られる地中海沿岸)のどこかに赴いて夏を楽しむのにぴったりの時計だ。水遊びをしたり、砂遊びを楽しんだりしても大丈夫だが、あまり深くは潜らないで欲しい! ……50m防水の37mm径PGモデルをつけているのなら。

 37mm径のオフショアではダイヤモンドが使われておらず、ミュージックボードのようなダイヤルがない唯一のモデルであることに気がついて驚いた。ついに私たち一般人でもつけやすいオフショアが登場したということだ。クラシックなロイヤル オークにおいて、オーデマ ピゲはどんな嗜好にも応じられるあらゆるサイズの時計を提供することで成功を収めてきた。そして今、その哲学はオフショアにも受け継がれようとしている。小さいサイズであっても、ダイヤモンドが必須というわけではないのだ。

 そして当然ながら、こう思うことだろう。「かつて“ザ・ビースト”と名づけられた時計が、どうして比較的コンパクトな37mmで提供されたのだろう?」と。それに対しては、こう返そう。「心配しないで欲しい。オフショアのラインナップには、あなたが言うようなワイルドな時計がまだまだ残されているよ」。


基本情報
ブランド: オーデマ ピゲ(Audemars Piguet)
モデル名: ロイヤル オーク オフショア(Royal Oak Offshore)
型番: 77605OK.OO.A101CA.01、15605SK.OO.A350CA.01、26420ST.OO.A828CR.01

直径: 37mm、43mm
厚さ: 12.1mm、14.4mm
ケース素材: ピンクゴールド(37mm)、SS(43mmおよびクロノグラフ)
文字盤色: ポリッシュ仕上げのアイボリーダイヤル、グランドタペストリーパターン(37mm)、スモークブルーまたはスモークブロンズダイヤル、メガタペストリーパターン(43mmおよびクロノグラフ)
インデックス: ゴールドのアプライド
防水性能: 50m(37mm)、100m(43mmおよびクロノグラフ)
ストラップ/ブレスレット: モザイクエフェクトを施した交換可能なベージュのラバーストラップ、18KPG製ピンバックル(37mm)、交換可能なブルーのラバーストラップ、APピンバックル(43mm)、ハンドフィニッシュによりパティーヌが施された交換可能なブラウンのアリゲーターストラップ、スティール製ピンバックル(クロノグラフ)

ダニエル・ロートとラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトンが見事に仕上げた後継モデル。

まず、ダニエル・ロート トゥールビヨン ローズゴールドで目を引くのはブラックポリッシュ仕上げである。時計を裏返してサファイア製シースルーバック越しにCal.DR001をのぞくと、スースクリプションモデルのクローズドケースバックから進化した点が分かる。そして大きなブリッジのコート・ド・ジュネーブと対比する形で、曲線的なブリッジには完璧に仕上げられたブラックポリッシュが施されている。
数週間前に新しいトゥールビヨン ローズゴールドの紹介文を書いたときには、その仕上げのレベルをあまり理解していなかった。レンダリング画像だけではその精巧さを感じ取るのは難しい。だが実物を目の当たりにすると、その完成度の高さがすぐに分かる。

同じ感動は、ケースやダイヤル、そしてトゥールビヨンに組み込まれたすべての部品にも表れている。正直に言えば、かなり地味な自分の好みからは大きく外れているものの、これほど卓越したウォッチメイキングとクラフトマンシップの最高峰を示す時計はそう多くない。確かに、エリプソカーベックスケースへの揺るぎないこだわりや古風なデザインは、ダニエル・ロートのコレクターにとって魅力の一部なのだろうが、これは間違いなく好みが分かれるデザインだ。
しかしダニエル・ロート トゥールビヨン ローズゴールドとそのCal.DR001に込められたクラフトマンシップとウォッチメイキングは、誰もがそのよさを認めるだろう。

本作は昨年のスースクリプションモデルと大きく異なるわけではないが、明らかに進化を遂げている。5Nのケースとダイヤルは、より温かみを感じさせる仕上がりになっている。両方を並べてみるとトゥールビヨン ローズゴールドはとくに印象的だ。ゴールドのダイヤルはカリ・ヴティライネンが所有するコンブレマイン(Comblémine)工房でつくられ、直線的なギヨシェがきわめて精巧に施されている。トゥールビヨンの特徴的な“ムスターシュ”の細かい縁までもが手作業でギヨシェ加工されている(ちなみに、ジャーナリストのクリス・ホール氏がこれについて言及しているのを見たことがあるが、スイスの時計業界は“ギヨシェ”という言葉の使用を制限し、旋盤を使った伝統的な製法で作られた文字盤にのみ限定するべきではないだろうか。現在“ギヨシェ”という用語は過剰に使用されており、顧客に混乱を引き起こしているように感じる)。

実際、トゥールビヨン ローズゴールドはスースクリプションほど厳密に限定されてはいないが、ダニエル・ロートによれば年間の生産数を50本に絞っているという。とくにギヨシェによる装飾が生産の制約となっているとのことだ。
 スースクリプションモデルからの最大の進化は、サファイア製シースルーバックの採用によりCal.DR001が完全に見えるようになった点だ。スースクリプションは1990年代のオリジナルトゥールビヨンのスースクリプションに倣い、クローズドケースバックを採用していたが、この次世代モデルでは1990年代のトゥールビヨンの後続モデルと同様、オープンケースバックが採用されている。

Cal.DR001はスースクリプションと同じ手巻きムーブメントで、ダイヤル側に1分間で1回転するトゥールビヨンが配置されている。このムーブメントはラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトンによって開発、組み立てられており、精巧に施されたコート・ド・ジュネーブを特徴とするふたつの大きなブリッジを備えている。またゴールドシャトンやブラックポリッシュ仕上げが美しく映える曲線的なブリッジなど、今では高級時計製造の定番となったディテールも見受けられる。

トゥールビヨン ローズゴールドと昨年のスースクリプション。
仕上げや作り込みは、現代のコレクターが高級インディペンデント(メーカー)に期待する水準にしっかりと応えている。15万5000スイスフラン(日本円で約2570万円)という価格もさることながら、ルイ・ヴィトンという後ろ盾がある以上これは当然かもしれないが、それでもこのウォッチメイキングの素晴らしさは揺るがない。その精巧な仕上げは表側にも施されており、6時位置のワンミニッツトゥールビヨンとともに美しく映えている。
RG製ケースは38.6mm×35.5mmで、厚さは9.2mmとなっている。これは1990年代のオリジナルトゥールビヨンよりも2mmほど薄いのだが、これはDR001のおかげであり、写真では十分に理解できなかったディテールである。ケースのバランスもよくなり、ミドルケースの側面が上下を完璧に二分している。さらに丸みを帯びたラグがわずかに下に傾斜しているため、オリジナルと比べてもつけ心地が格段に向上している(ダニエル・ロートはアーカイブからいくつかのピースを展示し、新作トゥールビヨンとの比較ができるようにしていた)。

私の6.3インチ(約16cm)の手首に装着してみた。
スースクリプションに続いて、トゥールビヨン ローズゴールドでも、ダニエル・ロート、ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン、そして時計師のエンリコ・バルバシーニ氏とミシェル・ナバス氏は、オリジナルのダニエル・ロートデザインを再現しつつ、ほぼすべての面で少しずつ改善を重ねたことを示した。世界中に豊富なリソースがあったとしても、これは称賛に値する成果である。
 とはいえ、復活したダニエル・ロートが純粋に新しいものをどのように生み出すのか、まだ注目している。ブランドは時計師ダニエル・ロートがデザインした未発表の時計が未だにあり、それらが今後のリリースのインスピレーションになるとほのめかしており期待が持てるのだ。またダニエル・ロートならではの独自の美学を求める人々に向けて、もう少し手の届きやすいモデルが今後登場するのではないかとも考えている。

同僚マークの大き目の手首に巻いている。
現時点でトゥールビヨン ローズゴールドはダニエル・ロートとラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトンの技術力を余すところなく披露している。美しく、今年体験したなかでも特に印象的な高級時計のひとつだ。

ダニエル・ロート トゥールビヨン ローズゴールド。38.6mm×35.5mm径、9.2mm厚、30m防水。5Nローズゴールドケース&ダイヤル。手巻きCal.DR001搭載、約80時間パワーリザーブ、2万1600振動/時(3Hz)、1分間で1回転するトゥールビヨン。ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトンが設計・組み立てを担当。カーフスキンストラップ、ピンバックル。限定モデルではないが、ダニエル・ロートによると年間生産数は50本に制限。価格は15万5000スイスフラン(日本円で約2570万円)

3人のエディターが厳選した注目の時計9選

オークションシーズンが到来し(来ないことなどあるのか?)、すでに香港オークションは開催された。3シーズンぶりに、今秋はモナコに行けそうにない。しかしカタログには、モナコ・レジェンド・グループのチームだからこそ現代のオークションに出品するようなロットがたくさん並んでいる。ヴィンテージピースが多く、隠れた名品も数多くあり、自分自身入札を考えなければならないものもいくつかある。
 話題にすべきものがいくつかある。セルピコのサインが入ったピンクゴールドのRef.2526 エクスプローラーダイヤルは、あるグループ(おほん、ベン・クライマーとか)を興奮させるだろう。それと1950年代製のプラチナ製カルティエ タンクがブレスレット付きで1万5000ユーロから3万ユーロ(日本円で約245万~490万円)というのは、滑稽なほど低いと感じる。ブラックスターのダイヤルを持つオイスター パーペチュアル“ギャラクシー”も、かつてロレックスが製造したというのが信じられないほど素晴らしい時計だ。そしてモナコ・レジェンド・グループが最近、コラード・マッタレッリ(Corrado Mattarelli)氏を時計部門の副会長として迎え入れたことも注目に値する。これにより今後のカタログには、さらに多くのヴィンテージウォッチや、ネオヴィンテージ、現代モデルといった多様なラインナップが期待できるだろう。
 カタログを確認するのを手伝ってもらうため、そしてHODINKEEのヴィンテージ愛好家の幅広い好みを反映させるために、同僚のトニー・トライナとリッチ・フォードンに今回のオークションでお気に入りの3点を選んでもらった。

トニー・トライナの選んだ3点
ロット271: ヴァシュロン 4072 クロノグラフ スティールモデル

ロット271: ヴァシュロン・コンスタンタン 4072 クロノグラフ ステンレススティールモデル
 オークションの世界は恐ろしいものだ。そのため、通常はよく知っているモデルか、確かな来歴や信頼できるストーリーが確認できるものだけを見るようにしている。
 ヴァシュロン・コンスタンタンのRef.4072は、私のお気に入りのヴィンテージクロノグラフのひとつだ。基本的には、ヴァシュロンによるパテック 130への回答といったところだが、少しだけ大きくて、あえて言えばより優れた時計だ。サイズが若干小さく、しかもヴァシュロンであるために常に過小評価される運命にあるようだ。
 1938年に発表され、70年代初頭まで生産されたRef.4072は、ヴァシュロンのクロノグラフモデルのなかでも最も長く続いたモデルのひとつだ。コルヌ・ドゥ・ヴァッシュやRef.4178のほうが希少かもしれないが、私はいつでも優れた4072を選ぶ。約30年間のうちヴァシュロンは1178本を生産しており、そのほとんどがイエローゴールドかPGであった。

 コンディションのいいヴァシュロン 4072は、それだけで特別な時計だ。1月には、マイアミビーチ・アンティークショーでピンクダイヤルのPGモデルを掲載したが、今年見たヴィンテージウォッチのなかでもいまだに最高のひとつだ。それはその後すぐに8桁の高値で売れたと聞いている。
 しかしSS製のヴァシュロン 4072は別次元だ。モナコ・レジェンドによると、SSは約250本しか作られなかったため、この時計の見積もりが6万~12万ユーロ(日本円で約980万~1960万円)とされているのも納得だ。ケースはシャープで、ツートンダイヤルも良好かつオリジナルの状態である。ダイヤルの端にかけて少し経年変化が見られるが、防水ケースではなかったこれらの時計にとっては珍しいことではない。
 2017年に、この個体がアンティコルムで流札となったが、ダイヤルとケースが同じままであることが確認できる。変わらず残っていて安心だ。

結果6万5000ユーロ(日本円で約1060万円)で落札
ロット167: ブライトリング デュオグラフ

ロット167: ブライトリング デュオグラフ Ref.766 スプリットセコンド クロノグラフ
 ヴァシュロン 4072と同様、ブライトリングのデュオグラフも、“ダイヤルの名前を変えたらいったいどれほどの価値になるだろうか”と思わせる時計のひとつだ。ヴィンテージのスプリットセコンド クロノグラフは非常に希少で、“パテック”以外で製造していたブランドはごくわずかだ。ブライトリングは1944年にデュオグラフを発表し、その後シリーズからヴィーナス社製クロノグラフキャリバーを搭載したいくつかのリファレンスが登場した。
 アルファ・ハンズ(Alpha Hands)がデュオグラフの調査を行ったところ、各リファレンスや素材を含めてもブライトリング デュオグラフは数十本しか確認されておらず、その多くはオリジナルのパーツが残っていない。今回のSS製3レジスター Ref.766は1944年に製造された初期のモデルで、デュオグラフの生産が始まった時期にあたる。デザインはヴァシュロン 4072に似ており、スティールケースにゴールドのインデックスが施されたシルバーダイヤル、そしてアウタースケールが描かれている。明らかに同じ時代を象徴するふたつの時計だ。
 これだけの特徴を持ちながら、このデュオグラフの見積もりが“わずか”2万~4万ユーロ(日本円で約325万~653万円)だというのは信じがたい。2020年には同じモデルがフィリップスにて25万香港ドル(当時の相場で約345万円)で販売されたため、この見積もりは妥当だと思う。なおそれ以前の2017年にも、ほぼ同じ価格で販売されていた。価格に対してかなり価値のあるヴィンテージクロノグラフだ。

結果5万8500ユーロ(日本円で約955万円)で落札
ロット19: レーシング仕様のロレックス バブルバック

ロット19: ロレックス バブルバック Ref.3131 PG製
 先週ロレックスのバブルバックについて書きすぎたので、今回のカタログで最初に検索したのは当然“バブルバック”だった。イタリアのバイヤーはたいていいいものを数本揃えてくる(ときにはあまりよくないものも混ざっているかもしれないが)。
 私はPGのバブルバックに目がないため、このピンクオンピンクのRef.3131が大好きだ。しかしこのオークションで最も興味深いのは、見た目だけでなくそのストーリー性だ。

 このロレックス Ref.3131は1947年にタイのビラ王子が、ベルギーのグランプリ・デ・フロンティエール(Grand Prix des Frontières)で優勝した際に贈られたものであることが裏蓋の刻印から分かる。60年代や70年代のロレックスやホイヤー、ほかのレーシングクロノグラフももちろん大好きだが、1947年に勝利したドライバーが小さな金無垢のバブルバックを贈られるというその時代ならではの魅力がある。10年後なら、大きなSS製クロノグラフが贈られていたかもしれない。
 しかし1940年代には32mmのPG製バブルバックが“スポーツウォッチ”として選ばれていたため、これがモナコのオークションでお気に入りのロットのひとつだ。

結果1万8200ユーロ(日本円で約295万円)で落札

リッチ・フォードンの選んだ3点
ロット7: ユール・ヤーゲンセン トノー型のファイブミニッツリピーター、1920年代製

ロット7: ユール・ヤーゲンセン トノー型のファイブミニッツリピーター、1920年代製
 最初に紹介するのは、ここで取り上げるなかでおそらく最も“人気”が低いであろう時計だと予想しているユール・ヤーゲンセンだ。これは真の時計愛好家向けで、きわめてクールかつ非常に希少な時計だ。ユール・ヤーゲンセンへの私の愛は、特にこの時期のモデルに対して強い。きっかけはウルバン・ヤーゲンセンについて調べ始めたことだった。ここではその詳細を割愛するが、ヤーゲンセンに関するあらゆることについて知りたい場合はこちらの記事をご覧いただきたい。
 さて、この特別な時計に関して重要な文脈に話を戻そう。ユール・ヤーゲンセンは1919年にエドワード・ホイヤー社に買収された。そう、あのホイヤーである。いわゆる“グループ”の一員として、ヤーゲンセンの名前は超高級の腕時計や懐中時計をアメリカ市場向けに展開するために使用された。20世紀前半のスイス時計製造業の典型的な手法として、ホイヤーはルクルトやヴィクトラン・ピゲからエボーシュを調達していた。この2社は当時パテック フィリップにもムーブメントを供給していたサプライヤーである。このファイブミニッツリピーターウォッチのムーブメントを確認したわけではないが、この時代にこれほど高度なキャリバーを製造できるメーカーはほとんどいなかった。
 この時計自体について言えば、私はとても美しいと思うが、最初に言ったように万人受けするデザインではない。ただ近年はこうした、小振りで初期の伝統的なスタイルが非常に流行している。ケースサイズは35×41mmで、決して小さすぎるわけではない。大きなブレゲスタイルの数字が目を引き、シンプルながらも完璧に仕上げられたユール・ヤーゲンセンの筆記体ロゴがこの時計を私にとって特別なものにしている。もしダイヤルにカルティエと書かれていたら、見積もりは2倍、落札価格はおそらく3倍になっただろう。これは有名ブランド名に頼らず、初期の腕時計市場がどれほど評価されるかを試す興味深いケースになるだろう。

結果5万8500ユーロ(日本円で約955万円)で落札
ロット83: カルティエ トノー プラチナ、1990年代製

ロット83: カルティエ トノー プラチナ、1990年代製
 カルティエといえば、注目を集めるのはロット33の1970年代のホワイトゴールド製クッションモデルだ。このモデルはここ数年で記録を次々と更新している。YGモデルはもともと1万~1万5000ドルであったが、今年6月にボナムズでは7万6600ユーロ(日本円で約1250万円)で落札されるまで急上昇した。この波乱のなか、希少価値の高いWGバージョンはこれまで売りに出されていない。ロット33は見積もりの1万ユーロ~2万ユーロ(日本円で約160~325万円)を大きく上回って、新たな記録を打ち立てることが予想される。
 ただ私が注目しているのは、その50ロット後の時計だ。最近の市場ではヴィンテージのカルティエが注目されているが、トノーはほかのモデルほど注目を集めていない。これは1906年に発表された、カルティエ最初期のウォッチデザインであり、しかも異常に大きなサイズであることを考えると、この市場での評価の低さには驚かされる。とはいえ徐々にコレクターたちが気づき始めているようだ。たとえば、1920年代のプラチナ製トノーが、昨年6月のサザビーズでは2万8800ドル(日本円で約435万円)で落札され、その後新しい所有者にはさらに高額なオファーがあったという噂も聞いた。しかしこの夏は、1980年代や1990年代のトノーがあまり注目されていなかった。5月には、YGモデルがルーペ・ディス(Loupe This)にて7700ドル(日本円で約115万円)で落札されたが、これは非常にお得な買い物だった。
 直近のふたつの結果を見て、このロット83で勝負をかけることにした。先月のフィリップス・ジュネーブ・オンラインで2000年代のCPCP トノー プラチナモデルが2万320スイスフラン(日本円で約355万円)で落札され、見積もりを上回った。そして数週間前のサザビーズ香港では、クォーツムーブメントを搭載したトノー バンブーが33万6000香港ドル(日本円で約650万円)で落札され、大いに注目を集めた。つまりカルティエのコレクターたちはブランドの歴史のなかでも、新しいシェイプや珍しいモデルを探し続けているということだ。トノーは長いあいだ過小評価されてきたが、その歴史は1906年までさかのぼり、1980年代から90年代にかけてはヴィンテージのルックスと現代の高品質な製造技術が見事に融合している。

結果1万8200ユーロ(日本円で約295万円)で落札
ロット161: ロレックス クロノグラフ Ref.3330 スティールモデル、1937年製

ロット161: ロレックス クロノグラフ Ref.3330 スティールモデル、1937年製
 市場分析や、次に何が“注目される”かという予測というより、この1930年代のロレックス クロノグラフ Ref.3330は、ただただ圧倒的に素晴らしい時計だ。1930年代後半から1940年代にかけて製造されたこのオイスターケースではないロレックスのクロノグラフは、美しいだけでなく、2度と出合えないような素晴らしい状態だ。大げさに聞こえたくないので控えているが、実際のところ、1937年製の時計でこれほどの状態のものを見つけるのはとても珍しいことだ。しかも、それが生産本数200本未満のロレックス クロノグラフで、37mmのSSケースにクラヴァンツォラ・ローマのダブルサインが入ったツートーンマルチスケールダイヤルだとしたら? まさに別次元の存在だ。
 ヴィンテージのSS製クロノグラフは今の市場が求めているものではないかもしれないが、こういった時計を探しているコレクターにとってはほとんど問題にならない。全体的なヴィンテージウォッチコミュニティはプレデイトナやロンジン 13ZNのような時計から一時的に目が離れているかもしれないが、本物のコレクターたちは今も変わらず熱心にそれらを追い求めている。しかもかなりの金額を支払って。見積もりが18万〜36万ユーロ(日本円で約2940万~5885万円)と高額なのは事実だが、このレベルの品質を考えるとそれは問題にはならないだろう。このクオリティの時計はほぼ手に入らない。実際、このリファレンスでこれほどの状態のものが市場に出たのは、この個体が2022年に最後に売却されたとき以来のことだ。それより前にさかのぼると、2016年にフィリップスの伝説的なオークションStart-Stop-Resetセールで、SS製の同リファレンスが記録的な価格で落札されたときである。

結果44万2000ユーロ(日本円で約7225万円)で落札

マーク・カウズラリッチの選んだ3点
ロット110: ロレックス デイデイト Ref.6511 スティールモデル

ロット110: ロレックス デイデイト Ref.6511 スティールモデル
 リストを締めくくるなら、ふたつのカバーロットを選ぶことになるけれど仕方ない。それが自分の特権だし、取り上げる価値がある時計だ。最初に紹介するのは、ほとんど“ミーム”化しているような時計だ...SS製のデイデイトなんて存在しないはず。ロレックスはSS製をつくっていないし、理論的にも存在しない。しかしこの時計は少なくともその例外だ。Ref.6511はデイデイトの初代モデルであり、1955年にロレックスが製造したものだ。シリアルナンバー99272を持つこの時計は、スペインのディーラーに納品され、長年個人コレクターの手元にあった。やがてこの時計が発見され、ジョン・ゴールドバーガー(John Goldberger)氏のコレクションに加わり、そこで長いあいだ保管されていた。美しいトロピカルダイヤルに、エイジングで少し黄ばんだホワイトゴールドのベゼルはまさに究極のロレックス デイデイトといえる時計だろう。エスティメートは75万〜150万ユーロ(日本円で約1億2260万~2億4515万円)。

結果119万6000ユーロ(日本円で約1億9545万円)で落札
ロット296: 恐らくユニークピースのパテック フィリップ Ref.2438/1 ピンクゴールド

ロット296: 恐らくユニークピースのパテック フィリップ Ref.2438/1 ピンクゴールド
 パテック Ref.2497について深く掘り下げた際、ねじ込み式のケースバックを備えた防水バージョンであるRef.2438/1にも言及した。さて、今回そのなかでも特別で、市場に新たに出てきたものがある。PG製の2438/1だ。このリファレンスは56本しか製造されておらず、私の調べだとそのうちPGモデルが市場に出たのは5本だけ。しかもそのすべてにドフィーヌ針とバトン型インデックスが備わっている。この時計は、文字盤に“オーバーサイズ”のアラビア数字とブルースティック針を備えたおそらくユニークピースで、これまで知られていなかったモデルだ。この個体は45年間、ひとつのコレクションに保管されており、豊富な資料が付属している。実物は見ていないが、画像で見る限りコンディションは良好で、パテックコレクターにとってはもちろん、この時代の時計を好みながらも少し違ったものを探している人にとっても素晴らしい時計になるだろう。エスティメートは50万〜100万ユーロ(日本円で約8170万~1億6345万円)だ。

結果122万2000ユーロ(日本円で約1億9970万円)で落札
ロット58: オーデマ ピゲ 25726BA パーペチュアルカレンダー ポケットウォッチ コンバージョン

ロット58: オーデマ ピゲ 25726BA パーペチュアルカレンダー ポケットウォッチ コンバージョン
 さて、私はポケットウォッチに目がないのは周知の事実だが、今回はふたつの理由でとくに目を引いた。まず、ポケットウォッチを工場でコンバートして、ラグを追加して腕時計にするという例はあまり見かけない。なぜか? それは今回のように47mmと大きく、つけにくい時計になってしまうことが多いからだ。もっとも袖口の上から着用するなら別の話だが。

袖の上から時計をつけるなんて、許されるのはあの人物だけだろう。
 実はずっと探している特定の時計がある。ただその行方を知りたいだけなのだが。何十年も前、フィアットのリーダーでありスプレッツァトゥーラのサルトリア王、ジャンニ・アニェッリ(Gianni Agnelli)が、クルマの窓から身を乗り出して誰かと話している写真があった。その写真に写る彼の腕にはオーバーサイズの永久カレンダー付きコンバージョンポケットウォッチがあった。この時計もそれに似ているが、アニェッリの時計とは少し違っていて(彼のはリューズは短くてボウがない)、残念ながらその失われた時計ではない。だがそれでもこの時計は十分クールだ。1990年代につくられた25726BAシリーズの第1号で、これを腕時計にコンバートしようとするなんてかなりの自信があったに違いない。しかもフルセットで提供されているため、アニェッリの時計ではないにしても非常に興味深い一品だ。エスティメートは7万〜14万ユーロ(日本円で約1140万~2290万円)。

ジュネーブウォッチグランプリ(GPHG)で入賞した時計のなかから、見逃しがちな4本を取り上げる。

本日は、ベルナルド・レデラー(Bernhard Lederer)氏による今年のクロノメトリー賞に注目する。この賞は、“優れた精密計時性能(特殊なエスケープメントまたは独特の調整装置)が際立ち、検査機関によって公式に認定(ISO 3159規格)された最優秀の時計”に与えられる特別賞だ。
1年ちょっと前、元同僚のローガン・ベイカーのすすめで、ウォッチタイム期間中にニューヨークを訪れていたベルナルド・レデラー氏に初めて会った。ベイカーが執筆したレデラーのセントラル インパルス クロノメーターに関する詳細な記事は魅力的だったが、当時の私には少し難しく感じたかもしれない。しかし、“レデラー氏に会えば有益な情報が得られるだけでなく、とても楽しめるはずだ”というベイカーの説得力ある言葉に背中を押され、会うことを決めた。予想どおり予定の1時間をはるかに超えて会話が続き、それ以来私はレデラー氏の時計に強く引かれるようになった。
 今日は、ジュネーブウォッチグランプリ(GPHG)でクロノメトリー賞を受賞した、セントラル インパルス クロノメーターの最新モデルである“トリプル サーティファイド オブザバトリークロノメーター”を取り上げる。しかしその前に、すべてがどこから始まったのかを振り返る。

私はレデラー氏が“確固たる信念を持つ”時計職人であることを知った。彼に、ほかの時計職人のムーブメントについて率直に尋ねれば、何がよくて何が悪いのかについて正直な意見をたっぷり教えてくれる。特定のムーブメントだけでなくその背後にあるコンセプト自体の欠点についても、レデラー氏が記事のなかで巧みに指摘している部分をベイカーの記事で読むことができる。たとえばナチュラル脱進機について、レデラー氏は脱進機の重量がゼロ(追加のエネルギーを必要としない)である場合にのみ本当に機能すると主張している。まあ、それはまた別の機会に詳しく話そう(前述の記事も参照)。
 レデラーの最新作を理解するためには、彼のオリジナルのセントラル インパルス クロノメーターを振り返る価値がある。しかし、それにはかなり深い専門知識が必要であり、この記事(そしてこの時計)は必ずしも万人向けではないことをご了承いただきたい。セントラル インパルス クロノメーターは、その名が示すとおりブレゲのナチュラル脱進機とジョージ・ダニエルズ(George Daniels)が開発した独立した、2輪のデュアルインパルス脱進機からインスピレーションを得た脱進機を搭載した高精度ムーブメントだ。このムーブメントはCal.9012で、基本モデルとほぼ同じ構造となっている。レデラー氏は今年初め、このムーブメントの小型版を39mmのCIC(セントラル インパルス クロノメーター)用に製作したが、今回のモデルでは大型化されたムーブメントを使用しており、下の写真のように44mmのケースに収められている。

 本作は4番車と5番車のあいだに配置される、ふたつのルモントワールを備えた二重輪列を特徴としている。これにより各エスケープホイールへのエネルギーとトルクが安定して供給され、より安定した動作と精度の向上を実現している。ルモントワールは時間差で動作するよう設計されており、それぞれが10秒ごとに作動しながら、交互に連動して5秒ごとに動力を解放する。この過程を経て、テンプに直接力が伝わる仕組みになっている。

 オリジナルのCICウォッチにはふたつの輪列があるため秒針が2本搭載され、それぞれが逆方向に動いていた。文字盤にはガンギ車や10秒ごとにルモントワールを巻き上げる役割を果たすルーローの三角形(数学や工学の分野で知られる特殊な図形のひとつ)が見える開口部が設けられていた。これはあくまで個人的な好みだが、私はこのデザイン要素があまり好きではなかった。今年初めに発表されたルノー・ティシエ “マンデー”というモデルもこの時計によく似たデザインだが、やはり私の好みには合わなかった。どちらも魅力的な技術を備えてはいるものの、私がこのような時計に求める、クラシックで深みのある魅力を感じることはできなかった。

 新作のレデラー トリプル サーティファイド オブザバトリークロノメーターは、美的にも大きな進化を遂げた、時計製造の魅力的な物語を語るモデルだ。残念ながらこの時計はGPHGの投票過程で予定よりも早く情報が漏れてしまった(ただし、タイムオンリー部門で最終選考に残っている)。だがそのリークがすぐに私の興味を引いた。今回の新作は、優れたムーブメントとドーム型ケースバックを継承しつつ、904Lステンレススティール製ケースを採用している。またデザインも刷新され、頑丈なスターリングシルバー製ダイヤルを備えたことで、44mm×12.2mmというサイズながらスポーティでカジュアルな印象を与え、より装着しやすくなった。これだけでもこのモデルをより魅力的なリリースにしているが、まずはムーブメントに焦点を当てたいため、デザインについてはのちほど触れる。


 この手巻きムーブメントは、ふたつの独立した輪列、ふたつのルモントワール・デガリテ、そしてナチュラル脱進機を搭載しており、時・分そして簡潔なシングルセコンド表示を備えている。レデラーは古典的なスイス時計製造のアプローチに対して、より現代的なムーブメントデザインと仕上げを採用しており、それが非常に効果的に機能している。特にケース内で縦横に広がるブリッジの角ばった形状は、この複雑なアイデアが斬新でモダンな解釈であることを力強く物語っている。このアイデアは長年にわたりさまざまな形で試みられてきたが、レデラー氏のアプローチは独特で洗練されている。


 CIC全体をとおして、この独特なケース構造は私のお気に入りの特徴のひとつだ。ミドルケースのエッジを部分的に切り取ることで、レデラーはムーブメントをさまざまな角度から鑑賞できるようにしている。また裏蓋はネジではなく接着剤で固定されており、そのため修理が難しくなっているように思う。ただレデラーのチーム以外でこの時計を修理してくれる人がいるとは思えない。



 ムーブメントには、限定8本のトリプル サーティファイド オブザバトリークロノメーターのみに刻まれる黄金のコンパスローズが施されている。そのほかの部分にも、美しい面取りやポリッシュ仕上げ、つや消し加工が施されているが、このような時計を選ぶ理由は仕上げの美しさよりも、そのクロノメトリー性能にあると私は思う。


 文字盤側に目を戻すと、ひとつのインダイヤルの内側に経度と緯度の3つの座標が刻まれていることに気づくだろう。この背景には、オリジナルのCICにまつわる物語がある。初期のころ、レデラー氏はスイスの法的要件である公式認定を受けていないにもかかわらず、自身の時計を“クロノメーター”と呼んだことで批判を受けた。しかし、彼がこの時計をクロノメーターと主張するには、それなりの理由があった。採用された脱進機の技術的特性や、彼自身のテストで精度基準を満たしていたことなどが挙げられる。ただしこの時計のテストは非常に難しかった。ダブル輪列と4つのルモントワールを備えた構造のため、ほとんどの標準的なテスト装置では正確に測定することができなかったからだ。
 この課題をいちど解決したあと、レデラー氏は新作ウォッチのテストをさらに高い次元へ引き上げることを決意した。フランスのブザンソン、ドイツのグラスヒュッテ、そしてスイスのジュネーブにあるクロノメトリー検定所(Observatoire Chronométrique)でそれぞれの時計をテストしたのだ。各時計には、これら3カ所の検定所から発行されるテスト証明書が添付されており、レデラー氏がこのプロジェクトに込めた自信がさらに裏付けられている。当初の計画ではこれらの地名をすべて文字盤に記載する予定だったが、グラスヒュッテという名称は保護対象であり、その計画が問題を招く可能性があると指摘を受けた。結果として、この方法は彼の業績を控えめかつ洗練された形で誇示することとなった。

 よりシンプルで視認性の高い針のデザインなど、ほかにも素晴らしいディテールや改良が施されている。針は美しい青焼きが施された2ピース構造で、手作業で曲げられている。ただこれらのデザインにも細かな工夫が込められている。分針の内側にはポインターがあり、6つの目盛りで構成された特別なスケールを指し示す。この目盛りはそれぞれ10秒間隔を表しており、ルモントワールの機構によって針は10秒ごとに動き、そのスケールに正確に一致する。

 レデラーの卓越した時計技術はそのままにデザイン面での一貫性が増し、ブランドの魅力が高まっている。だが新作のトリプル サーティファイド オブザバトリークロノメーターは限定8本のみの製造で、価格は14万6000スイスフラン(日本円で約2460万円)と高額だ。レデラー氏は“ゆっくり、着実に”を信条としており、この新作が彼の数十年にわたる経験を基にした新たな世代のレデラーウォッチの幕開けとなることを期待している。

アウトドローモがMobil 1、新たな限定モデルが登場した。

アウトドローモは、初期にてがけたデザインのひとつであるモノポストを特別な経緯で復活させた。モノポストの初代モデルは、アウトドローモ創設者のブラッドリー・プライス(Bradley Price)氏が第2作目として取り組んだ機械式時計のデザインから2012年11月に誕生した。このモデルはプライス氏が抱くモータースポーツへの情熱から生まれたもので、1950年代のシングルシーターカテゴリのグランプリカー、その計器にオマージュを示したデザインが特徴だ。特に赤く塗られたエリアがその象徴的なディテールとなっている。初代モデルは2色展開で各250本が生産され、即座に完売した。この成功により、アウトドローモは時計ブランドとしての地位を確立することとなったのである。2017年にはモノポストをクロノグラフとして再設計したものの、それ以降このシリーズは休眠状態に入った。

それから12年以上の時を経た現在、モノポスト Mobile 1 エディションとして3針モデルとして復活を果たした。Mobil 1 レーシングチームとのパートナーシップのもと、合成エンジンオイルMobil 1の50周年を記念した限定モデルである。直径43mmのステンレススティール(SS)ケース(金メッキ版も用意)という外観は初代モデルと共通だが、それ以外には多くの改良が加えられている。

 直径が大きい点に少々抵抗を感じるかもしれない(まあ理解できる)が、今回のモデルではケースの厚さが初代の11.98mmから10.8mmにスリム化されており、ワイヤーラグが手首によりフィットしやすくなったことを期待したい。また初代モデルで採用されていたミネラルクリスタルは、より高品質なサファイアクリスタルに変更されている。この点は、大振りな風防のサイズを考慮すれば必須の改良といえる。内部には従来のCal.821Aに代わり、ミヨタのCal.9039が搭載されており、デイトを排した仕様となっている。

今回最大の変更点は、新たに採用された光沢のあるホワイトダイヤルだ。一部の文字表記やフォントは若干アップデートされ、クロノグラフ版からの要素が取り入れられているが、この時計最大の魅力は6時位置のすぐ上に配された赤いペガサスのロゴにある。これはMobil 1のレーシングスピリットとブランドアイデンティティを象徴する、ひと目でそれとわかるシグネチャーデザインである。また風防からはレッドラインが削除されており、同要素をガラスの一部に塗装していた従来のモノポストとは異なる仕様となっている。さらにMobil 1のカラースキームを反映し、時刻表示の文字やスケルトン仕様の針はダークブルーで仕上げられ、秒針は赤いペガサスのロゴと同じカラーとなっている。
 モノポスト Mobile 1 エディションは合計150本の限定生産で、そのうち100本がSSケース、50本が金メッキを施したSSケースとなる。SS版の販売価格は875ドル(日本円で約13万6000円)、金メッキ版は950ドル(日本円で約14万8000円)。各モデルにはシリアルナンバーが刻印され、対応する番号が入ったコレクターズボックスとともに提供される。

我々の考え
現在のアウトドローモを知る人の多くは、おそらくグループBモデルをきっかけにブランドを知ったのではないだろうか。それが同ブランドにおける代表的なヒット作であることは間違いない。しかし個人的にはあまり話題にならないアウトドローモのデザインも好きで、特にモノポストはその筆頭だ。昨年、初代モノポストを試す機会があったが、サイズが大きいとはいえ楽しめる1本だった。

自分の手首には合わないが、遠くから眺めるには実に魅力的な時計だ。とはいえ手首の大きい人や、あえてオーバーサイズの時計をつけてドライブしたい人にはぴったりの1本だろう。今回の新バージョンがどのような仕上がりになっているのか、実際に手に取って試してみたい。薄型ケースへの変更が着用感にどれほどの影響を与えているのか気になるところだ。ただし大径ケースの時計は、厚みを抑えることでかえって大きく見えてしまうこともある。

デザインの面では、Mobil 1 エディションで施された変更点を高く評価したい。2017年のクロノグラフ版から採用されたダイヤルのフォントを取り入れたのは正解だろう。3針のモノポストに落とし込んだことで、全体的にすっきりと洗練された印象になった。ダイヤルに過度な装飾を施さなかったことで赤いペガサスが際立ち、それこそがこのモデルの狙いなのだと思う。モノポストの復活をこのパートナーシップの発表の場として活用したのは、実に粋な演出だ。


そして何よりもこのモデルの素晴らしい点は、モノポストが単なるモータースポーツへのオマージュではなく、Mobil 1と公式にコラボレーションした時計になったことである。アウトドローモのようなブランドからすると、これは創設者ブラッドリー・プライス氏にとっても大きな出来事だろう。クラシックなモータースポーツに精通しているわけではない自分でさえ、赤いペガサスのロゴが持つアイコニックな存在感は理解している。モータースポーツ業界で名を馳せるMobil 1が、一般的にはまだニッチな存在であるアウトドローモとのパートナーシップを組んだことは、まさに夢のような展開ではないか。この限定モデルはアウトドローモの熱心なコレクターやモータースポーツ愛好家にとって、ぜひ手に入れたい1本になることだろう。

基本情報
ブランド: アウトドローモ
モデル名: モノポスト Mobile 1 エディション

直径: 43mm
厚さ: 10.8mm
ケース素材: SS/金メッキを施したSS
文字盤色: 光沢のある白
インデックス: プリント
夜光: なし
防水性能: 50m
ストラップ/ブレスレット: イタリア製バッファローレザー、ブルー(SS製モデル)/ブラック(金メッキを施したSS製モデル)

ムーブメント情報
キャリバー: ミヨタ 9039
機能: 時・分・秒表示
パワーリザーブ: 42時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 24

モー・コッポレッタ氏が、新進ブランドでデザイナーとしての新たな役割を担う。

フェアで見かけるとは思っていなかったが、仕立てのいいスーツに厚めのフレームのメガネが印象的な人物だった。しかし、その洗練された装いだけではモー・コッポレッタ(Mo Coppoletta)氏の多彩なバックグラウンドをすべて読み取ることはできない。彼はタトゥーアーティストとしてキャリアをスタートさせ、そのあとカーデザインやインテリア、スピリッツ、メンズウェアといった幅広い分野でデザインを手がけてきた。そして今、彼がクリエイティブを率いるのが“ガガ・ラボラトリオ(Gagà Laboratorio)”という比較的新しいブランドだ。コンセプトは、“イタリアンデザインとスイスの精密技術が融合したラグジュアリーウォッチ”。 現行モデルのラボルマティックは、その独特で目を引くデザインが印象的だった。そこでブランドマネージャーと話をしたあと、実機を詳しく見るために2本取り寄せてみることにした。

ラボルマティック・バウハウス
ラボルマティックにはふたつのバージョンがあり、上のバウハウスと下のチンクアンタは、どちらも市場でよく見かけるデザインとは一線を画している。個人的に、アイデアの先駆者でないなら少なくともその分野で最高のものをつくるべきだと思っている。そうでなければ、まったく新しいものを生み出すほうがいい。そんななか称賛すべき点は、コッポレッタ氏がこの退屈になりがちな市場に対する鮮やかなアンチテーゼを提示していることだ。

コッポレッタ氏の時計デザインへの進出はこれが初めてではない。過去にはブルガリやクロノパッションと協力し、タトゥーをモチーフにした限定オクト フィニッシモを手がけている。ただ、タトゥーのない自分としては、あの限定モデルについて深く考えたことはなかった。自分のスタイルに合うとは思えなかったからだ。しかし新しいラボルマティックでは、彼のクリエイティブなデザインがより身につけやすい形で表現されている。

ラボルマティック・チンクアンタ
この時計は独特なセクタースタイルのダイヤルを採用しており、立体感にあふれている。4つの象限と時刻表示を囲むフレームが盛り上がり、その内部にはドーム状のセクションが配置されている。さらに中央の分表示は1段高くなっており、コントラストのあるカラーを採用。そして文字盤中央にはブランドロゴ入りのキャップが配され、これがスモールセコンドとして回転する仕組みだ。内部には自動巻きムーブメントを搭載しており、シースルーバック、ドーム型サファイアクリスタルで全体的に厚みのあるデザインとなっている。その結果ステンレススティールケースのサイズは42mm径、厚さは13.3mmと、ややボリューム感のある仕上がりだ。

印象的なデザインもさることながら、この時計の主役はやはりディスプレイだ。一見すると、カルティエのタンク・ア・ギシェのようなジャンピングアワーに見えるかもしれない。しかし、5000ドル(日本円で約77万円)以下の価格帯でそれを期待するのは少々無理がある。実際にはアワーディスクが文字盤の下に隠されており、12時位置の開口部を通して時間を読み取る仕組みだ。

両バージョンとも時刻を指し示す赤い矢印が付いているが、ジャンピングアワーのように瞬時に切り替わるわけではなく、時間が経つにつれてゆっくりと回転していく。そのため時刻表示の数字は時間が進むにつれて部分的にフレームから外れることがあるが、それを補うためにディスク上で数字が繰り返し配置されている。ただし大きな数字がディスプレイの中央にしっかり表示されるのは、ちょうど時間が切り替わるタイミングのみとなる。この仕様は最初少し戸惑うかもしれないが、慣れれば問題なく判読できる。

文字盤の中央、スモールセコンドの周囲には分表示が配置されている。バウハウスバージョンでは目盛りと長めのインデックスが描かれており、5分刻みの間隔が強調されている。時刻を示すのは小さな赤い針で、先端には円と矢印があしらわれている。一方チンクアンタでは、ミニッツトラックが個性的でスタイリッシュなフォントで描かれ、ボックスのなかに収められた矢印が分を指し示すデザインになっている。

このデザインは視認性に優れ、かつクリエイティブだ。しかし何よりも特筆すべきは(残念ながら、これを称賛しなければならないほど)フォントの選択が素晴らしいことだ。そう、これはクールなフォントなのだ。多くのブランドが似たようなフォントばかりを使い、セリフ体とサンセリフ体をごちゃ混ぜにし、無料フォントサイトのdafont.comから適当に拾ってきたようなデザインを採用しているのが現状だ。そんななかガガ・ラボラトリオは大手ブランドよりも真剣にフォント選びに取り組んでいる。

全体的なプロダクトとして見ると、視認性の面では決してひと目で読み取りやすい時計とは言えない。しかし私はウルベルクやMB&Fといった、時間をシンプルに伝えることを第1に考えていないブランドのファンでもある。そのためガガ・ラボラトリオが既存の枠にとらわれず、新しい試みに挑戦している点は評価したい。とはいえブランドが今後さらに進化し、デザインやモデル展開を広げていくうえで、いくつか指摘したい点もある。


シースルーバックをとおして、ガガ・ラボラトリオはムーブメントを披露している。このモデルはラ・ジュー・ペレのLJP-G100を搭載し、ディスク表示を可能にするためのカスタマイズが施されている。またローターはブランドロゴを想起させるデザインに改められており、クリエイティブなアプローチが見られる。しかしここからが問題だった。この時計を実際に使い始めた途端、私の評価が少し変わり始めたのだ。

ラ・ジュー・ペレのLJP-G100は、信頼性の高いエボーシュムーブメントであり、しばしばセリタSW-200の代替として使用される。ただし、パワーリザーブはSW-200の約80%増しと、持続時間の面で優れている。このムーブメントは、ファーラン・マリの3針セクターやアンオーダインのモデル1(手巻き仕様のSW-210版も併売)、ファラーのレゾリュート IIなど、さまざまなブランドの時計に採用されている。なかでもアンオーダインは最も高額なモデルで、最小サイズで2688ドル(日本円で約40万円)する。ただし、同ブランドのモデルはガラス質のエナメルダイヤルを採用しており、ダイヤルのクオリティを考えれば非常に優れたコストパフォーマンスを誇る。一方でこのラボルマティックの価格は3900スイスフラン(日本円で約65万円)。ほかのLJP-G100搭載モデルと比べると、かなり高めの設定となっている。確かにユニークな表示スタイルではあるが、ムーブメント自体のコストと直接結びつく価値の提案としてはやや弱い印象を受ける。

ローターも腕につけているとかなり緩い印象を受けた。この感覚は、むしろ1000ドル(日本円で約15万円)以下のダイバーズウォッチに期待するものであり、税込みで5000ドル(日本円で約75万円)近くになる時計では少々気になるポイントだ。また、12時位置に配置されたリューズはデザインとしては素晴らしいが、実際に時刻を調整する際にはやや扱いづらさを感じた。この問題は、かつてのF.P.ジュルヌのクロノメーター・レゾナンスでも見られたものだ。つまり、ガガ・ラボラトリオだけが機能性よりもデザインを優先したわけではない。しかし、ジュルヌは最終的にこの設計を改めている。
 予想どおり、ラボルマティックの両バージョンにおいて最も魅力的なのは、やはりデザインの要素だ。モー・コッポレッタ氏は全体のルックスに相当なこだわりを持って取り組んだことがうかがえる。ケースには独特なフレア状の段差を持つラグが採用されており、これはスパイダーラグと、パテックのRef.2549に見られるデビルズホーンラグを掛け合わせたような印象だ。またイタリアンブランドであるロックマン デシモ・カントも、これに似た(より大胆な)デザインを採用している。ケース素材についてはプレミアム・ステンレススティールとされているが、具体的にどの合金が使われているのかは明記されていない。仕上げは基本的にポリッシュだが、バウハウスモデルではミドルケースとラグの段差の一部にアンスラサイト調のサテン仕上げが施されており、適度なコントラストが加えられている点は好印象だ。

本作はミッドセンチュリー調のデザインにインスピレーションを受けているように見えるが、なぜかアステカ的な雰囲気を感じずにはいられない。その理由をはっきりと言葉にするのは難しいのだが、もしかするとあなたも同じ印象を受けるかもしれない。特にチンクアンタではそれが顕著に感じられる。このモデルはその名のとおり1950年代をテーマにしており、その時代のデザイン要素を色濃く取り入れている。

ブラックダイヤルのほうが実用的で、さまざまなシーンで使いやすいのは間違いない。しかしチンクアンタのソフトなブルーグリーンの色合いに加え、数字のデザインや、ミニッツトラックを囲むフレームの細やかなつくり込みを考えると、個人的にはこちらを選びたい。コッポレッタ氏はまだまだアイデアのストックが尽きることはないだろう。価格設定、フィット感、仕上げにさらに磨きをかければ、ガガ・ラボラトリオは画一的なモデルが多い市場において、引き続きユニークな選択肢を提供し続けることができるはずだ。

ガガ・ラボラトリオ ラボルマティック。Ref.LMBA-001(バウハウス)、Ref.LM50-001(チンクアンタ)。ステンレススティールケース、直径42mm、厚さ13.3mm、防水性能の記載なし。12時位置にディスク式の時表示、中央に円形の分表示とスモールセコンドを配置。ムーブメントはラ・ジュー・ペレLJP-G100を改良し、最大約68時間のパワーリザーブ。ストラップはイタリア製サフィアーノレザー。

グランドセイコー ヘリテージコレクション SBGH359 阪急うめだ本店限定モデル

これまでにもユニークなグレーストライプダイヤルのスプリングドライブや、オリジナルのストラップを付属したスペシャルパッケージを発表してきた、グランドセイコーの阪急うめだ本店限定モデル。2024年末に登場したこちらの1本は、“阪急マルーン”と称される阪急電車をイメージしたカラーダイヤルを特徴とした最新作である。(関西の人々には今更説明の必要もないだろうが)阪急電車は関西地方を代表する鉄道会社のひとつであり、大阪・梅田を中心に神戸、大阪、京都の各都市を結ぶ歴史の古い私鉄だ。その始まりは1910年にまでさかのぼり、開業当初から紫がかった赤茶色、すなわちマルーンを車体の表面に使用していた。本作では関西において馴染み深いこのカラーをダイヤルに大胆に使用し、そこにGSロゴ、秒針インデックスのカラーでゴールドを挿すことで文字盤の美しさをいっそう際立たせている。

直径40mm、厚さ12.9mmのステンレススティール(SS)製のケースは、1967年に発売されたグランドセイコー初の自動巻き時計“62GS”のフォルムを現代的に再解釈したデザインになっている。グランドセイコーお得意のザラツ研磨によりラグの先端までエッジが立った多面的な造形を実現しており、光を受けることでメリハリのある美しい輝きを放つ。また、ベゼルレスなデザインのためダイヤルが広々と見える構造となっている点にも注目したい。実際に手に取ると、直径40mmという数字以上にダイヤルの存在を強く感じるはずだ。

ダイヤルを広く見せることができるベゼルレスの構造や、ザラツ研磨によるシャープな多面体構造に62GSの面影が宿る。

カットされたようなラグの先端が、シャープな印象を与える。

裏蓋のサファイアクリスタルには限定であることを示す“LIMITED EDITION”の文字と“獅子”のエンブレムがゴールドであしらわれている。
内部には自動巻きのCal.9S85を搭載。これは精度の要となるパーツを素材から見直し、2009年当時にグランドセイコーのラインナップでは約40年ぶりとなる自動巻き10振動ハイビートムーブメントとして発表されたものだ。製造はグランドセイコー スタジオ 雫石。3万6000振動/時で駆動して安定した精度を実現している半面、半導体製造に用いられる技術であるMEMS(メムス)によってミクロン単位で部品を再設計し、ガンギ車の前に“ガンギ中間車”を挟むことでハイビートの欠点である輪列にかかる負荷を分散させている。パワーリザーブも日常生活を送るうえで十分実用的な約55時間を確保。ケースバックはシースルーとなっていて、ムーブメントに施された精緻な仕上げやローターに彫られた“Grand Seiko”のロゴ、そしてクリスタルにあしらわれた“獅子”のエンブレムを楽しむことができる。堂々とした“LIMITED EDITION”も文字が印象的だ。


メンズウォッチにおいて一般的なサイズ、実用的なパワーリザーブ、安心の日常生活防水(10気圧)と、トータルでデイリーユースにも適したパッケージだ。価格は92万4000円(税込)で、40本限定での販売となっている。なお、本作はモデル名にもあるとおり阪急うめだ本店でのみの取り扱いとなる。

ファースト・インプレッション
この時計について執筆するにあたり阪急電車について色々と調べてみたのだが、探れば探るほど本作SBGH359と阪急電車との深い結びつきを実感することになった。同系色のダイヤルを持つモデルでいうと、“暮秋の美”をダイヤルで表現したエレガンスコレクションのSBGW287などが思い浮かぶ。しかし本作では、印象的なざらつきのある仕上げを施したり、その他のパターンをダイヤルに使用したりしているわけではない。上品な光沢のある、フラットなダイヤルを採用している。

阪急電車は数年ごとの車両の再塗装の際、不良箇所にそのまま上塗りするのではなく、塗料を一旦剥がしたうえでパテで平滑化したのちに下塗り、本塗りを重ねるという手間を行なっているのだという。下地の塗装から凹凸をなくすことがあの美しい光沢を生み出す秘訣であり、SBGH359のダイヤルはまさに塗装したての阪急電車の車体を思わせるものとなっている。

また、阪急マルーンのダイヤルはほかのレッドモデルと比べてややトーンが暗く、色味自体の主張は控えめだ。実際に時計を手に取って撮影してみると、ダイヤルのマルーンは広告画像ほど赤みは強くなく、より落ち着いて見えた。この日着ていたダークブラウンのカジュアルなジャケットやベージュのチノパンとの相性は抜群だったが、タイなどの小物で色を拾ってフォーマルなダークスーツに合わせるのも面白そうだ。エレガントなケースデザインもそれを後押ししてくれるし、マルーンカラーによって強調されたゴールドのGSロゴ、秒針は手首の上で確かな高級感を放つ。

阪急電車は沿線の人々の生活に根ざしながら、利用者に上質な毎日を送っていると感じてもらえるようなブランディングを行なっているという。ライフスタイルの幅広いシーンで活用できるルックスに加え、高級腕時計としての満足感も与えてくれるSBGH359もまた、腕時計としてそんなスピリットを継承、体現しているように思う。

総じて、本機は企画担当者の深い阪急愛が伝わってくるようなモデルだ。特にダイヤルの仕上げについては、日ごろから阪急電車を利用している人にこそ見て欲しい。僕が気づけなかった共通点や発見が、まだまだ潜んでいるかもしれない。なお、限定モデルは特別な存在感を持たせるために、独特の意匠や工夫が施されることが多い。しかし本作は前述のとおり、明確なコンセプトを持ちながらも(スペックも含めて)デイリーに楽しめるモデルとなっている。グランドセイコーの購入を検討しているが多様なラインナップを前に決めかねている…、という方にも強くおすすめしたい。

なお、阪急うめだ本店から阪急グランドビルを挟んで対面に位置する阪急メンズ大阪にて、2月15日(土)からGrand Seiko POP-UP STOREが開催される。今回紹介した阪急うめだ本店限定モデルのほかブランドの定番モデルが多数展示され、一部ではレアな限定モデルも並ぶ予定だ。白樺(SLGH005)をはじめとした、現在のグランドセイコーを象徴するエボリューション9 コレクションも豊富に揃う貴重な機会だ。ぜひ実際に手に取って、比較、検討して欲しい。詳細は以下のとおりだ。
【Grand Seiko POP-UP STORE】
■期間: 2025年2月15日(土)~ 2月25日(火)まで
■購入特典: グランドセイコーをご購入のお客様にオリジナルノベルティをプレゼント※個数に限りがあります
■場所: 阪急メンズ大阪 1階メインステージ
■問い合わせ先: 阪急うめだ本店6階 インターナショナルブティックス ウォッチギャラリー グランドセイコー 直通 TEL06-6313-8421

基本情報
ブランド: グランドセイコー(Grand Seiko)
モデル名: ヘリテージコレクション メカニカルハイビート36000 阪急うめだ本店限定モデル
型番: SBGH359

直径: 40mm
厚さ: 12.9mm
全長: 47mm
ケース素材: SS
文字盤色: マルーン
インデックス: アプライド
夜光: なし
防水性能: 10気圧(日常生活防水)
ストラップ/ブレスレット:SS製

ムーブメント情報
キャリバー: 9S85
機能: 時・分表示、センターセコンド、3時位置に日付表示
直径: 28.4mm
パワーリザーブ: 55時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 3万6000振動/時
石数: 37
追加情報:平均日差+5~-3秒※

ブランパンのハイエンドモデルが技術の粋を凝らしたタイムピースとして、

『イン・ザ・ロスト・ランズ(原題:In The Lost Lands、なお日本での公開は未定)』の予告編のなかで、このセリフとともに、ほんの一瞬、霧に包まれた幻想的な時計の姿が映る。

予告編に登場するキャッチコピーが語るのは、とてつもない魔力を持ち、人を狼男に変身させるアーティファクトを求めてロスト・ランドを旅する魔女の物語だ。火を噴く2丁の拳銃を手に、ドクロに膝まで埋まりながら立つデイヴ・バウティスタ。その背後にはミラ・ジョヴォヴィッチの姿...そんなポスター画像とあわせて見れば、本作がポール・W・S・アンダーソン(Paul W.S. Anderson)監督によるアドレナリン満載のアクション映画であることが期待される。アンダーソンは『エイリアンVSプレデター(原題:Alien vs. Predator)』や大ヒットした『バイオハザード(原題:Resident Evil)』シリーズなどで知られる、多作なアクション映画監督だ。だがきわめて複雑なブランパンのヴィルレが、ジョージ・R・R・マーティン(George R.R. Martin)の終末世界にどうして登場したのか? スーパーコピー時計のその意外性には驚かされる。

短い予告編を見れば、ブランパン ヴィルレ カルーセル レペティション ミニッツ クロノグラフ フライバックが魔法の護符として登場するという、意外で入念に選ばれたチョイスに驚かされるかもしれない。この時計がなぜ映画に採用されたのか、その理由をポール・W・S・アンダーソン監督と共同プロデューサーのデニス・ベラルディ(Dennis Beradi)に聞いた。

ブランパンの時計をキャスティングした理由について、アンダーソン監督はこう語る。「俳優を選ぶように、役にふさわしい時計を選んだんです。プロデューサーのジェレミー・ボルト(Jeremy Bolt)は筋金入りの時計愛好家で、時代を超越した魔法のような雰囲気のある時計の写真をこれでもかというほど送ってくれました。この映画はポストアポカリプスの世界が舞台ですが、かつての世界から残ったモノたちは、神秘的な価値を帯びて非常に貴重な存在になっています。人々がもう時計を身につけなくなり、大聖堂の鐘の音で時を知るという中世的な世界において、それでもそこにあるタイムピースなのです」

ポールはこう続ける。「ブランパンを見つけたとき、それが理にかなっていると思ったんです。世界最古の時計ブランドであり、アポカリプス後の世界で生き残った数少ないタイムピースのひとつですから。ブランパンは時の始まりに存在し、時代の終焉においてもなお時を告げている。そういう意味でも、この作品のテーマにぴったりだったんです」

映画やレッドカーペットでよく見かける時計とは違い、これは広告のためのプロダクトプレイスメント(広告手法のひとつ)ではなかった。「ブランパンは私たちを信頼してくれましたし、私たちがブランドとその精神をきちんと理解していることを認めてくれました。ですから、こちらの思いとおりに映画に登場させることができ、芸術的なビジョンが商業的な縛りに損なわれることはなかったんです。その点で、決まったルールは何もなく、私たちにとって理想的なパートナーシップでした」とポールは語る。
デジタル化の課題

7488万8000円(税込)というブランパン ヴィルレ カルーセル レペティション ミニッツ クロノグラフ フライバックは、マイクロエンジニアリングの粋を極めた傑作だ。登場シーンは多くないが、ポールはこの時計を“時計界のトム・クルーズ”と呼んでいる。専属の警備がついていたほどで、その存在感はまさにスター級だった。共同プロデューサーのデニス・ベラディによれば、このきわめて複雑な時計をデジタル化するには数々の困難があったという。

 「ブランパンの製造図面は機密扱いで、通常の設計図を使うことはできませんでした。そこでブランパンが、実物のカルーセル レペティションをスキャンさせてくれたんですが、通常のスキャナーにマクロ仕様の改良を加えて対応しました。解像度は通常の3倍、1画像あたり約5万ピクセルで、300枚以上を撮影。非常に繊細なテクスチャーを再現するために、ひたすら細心の注意を払いながら取り組みました。時計内部で光がどう反射し、動くのか。その表現には照明の研究も必要でありアニメーションにおいても、ポールが描く“空中で回転しながら動く時計”のイメージを忠実に再現するために尽力しました。このプロジェクトは、ただの映像制作ではなくまさにひとつの使命でした。私たちはこの時計をリスペクトし、誰にも“デジタルに見えた”と思われたくなかった。フォトリアルに見えることが絶対条件でした。そして、それは実現できたと思います。満足いく完成形に至るまでおよそ5カ月かかりました」

これがどれほどの手間だったかをお伝えしよう。ポール・W・S・アンダーソン監督は、ブランパンのCGIによるメインショットのひとつに、女優のミラ・ジョヴォヴィッチも登場させたかったと語っている。「予告編に、雨のなか時計がこちらに向かって転がり落ちてくるショットがありますよね。あれこそデニスが5カ月かけて制作したブランパンのデジタルモデルです。そのカットの制作も終盤になったころ、私は“背景にミラを入れよう”と思いついたんです。でも彼女の映像素材がなかったので、デニスがCGIでミラの姿を再現することになりました。それにかかったのはおよそ1週間。つまり映画スターは1週間、時計は5カ月ということですね」
ブランパン ヴィルレ カルーセル レペティション ミニッツ クロノグラフ フライバック

ブランパンコレクションのなかでも、ヴィルレのラインはとりわけ伝統的なリファレンスがそろっており、そのルーツは19世紀の懐中時計にまでさかのぼる。なかでもカルーセルRMCF(レペティション ミニッツ クロノグラフ フライバック)は、45mmのケースに語るべき魅力を多く詰め込んだ1本だ。ただし厚さ17.8mmとはいえ、デイヴ・バウティスタ(Dave Bautista)の筋骨隆々の手首に乗せたら、まるで華奢なドレスウォッチに見えてしまうかもしれない。もっとも、これは毎日のローテーションでつけるような時計ではない。だからこそ日々の装着感はさほど重要ではないのだ。なにしろ価格は約7500万円。この時計の持ち主であれば、おそらく左袖のカフだけ径を広げた仕立てのスーツを用意しているだろう。

技術面で見れば、このブランパンは同ブランドのなかでも製造難度の高いモデルのひとつであり、10年以上にわたってその最上級ラインに君臨してきた。私の知る限り、これほど複雑な機能を組み合わせたモデルをほかのブランドは製造しておらず、なかでもトゥールビヨンのように構成されたカルーセルはきわめて希少だ。カルーセルもトゥールビヨンと同様に重力の影響を打ち消すために発明されたが、トゥールビヨンがひとつの動力でケージと脱進機を動かすのに対し、カルーセルではそれぞれに別の動力源が使われている。6時位置で舞うこの“プリマ・バレリーナ”は、ブランパンの魅力のほんの一部にすぎない。カルーセルRMCFには、フライバッククロノグラフ用の心地よい楕円形プッシャー、愛嬌ある赤い先端のクロノ針、そして8時30分位置の控えめなスライダーで作動するミニッツリピーターが奏でる音の魔法までもが備わっているのだ。グラン・フー・エナメルの柔らかな光沢と、シャープなローマ数字が配された広いアウターリングに時間が表示され、センターのオープンワークから覗く精緻なメカニズムをクラシカルな様式美が包み込む。我々の多くにとって、45mmものレッドゴールドの塊は平均的な手首にはやや大振りに感じられるかもしれない。しかしこの時計が放つ圧巻の存在感にはそれだけの価値がある。ブランパンの時計師とフィニッシャーたちの手腕は、スケルトン仕様の裏蓋をとおしてさらに明らかになる。543個のパーツからなるCal.2358の厚みや立体構造を、そこからじっくりと感じ取ることができるだろう。ローターの下には段差を設けたブリッジが幾層にも組まれ、そのすべてに彫り込まれたサンレイパターンのギヨシェが、内部に潜む複雑さをいっそう際立たせている。

ブランパン ヴィルレ カルーセル レペティション ミニッツ クロノグラフ フライバックに宿る伝統的な職人技は、一見するとポストアポカリプスのアクション映画とは相容れないように見える。だが、その“お守り”のような存在感は物語のなかに自然と溶け込み、時計がもたらすより深い意味を際立たせている。この作品の前提にあるのは、ある種の“グレイルウォッチ”が我々の心をどれほど強く引きつけるか、そして幸運な数人にしか味わえない魔法のような体験が、そこに宿っているということ。何百時間にもおよぶ職人技の結晶に引かれる人もいれば、代々受け継がれた時計に宿る思いに心動かされる人もいるだろう。時計は、単に時を刻む以上の存在であり、深い感情を映し出す“タリスマン”なのだ。
 

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