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2025年12月の記事は以下のとおりです。

「ルイ・エラール」メティエダール コレクションより「フィル・ドール/ルイ・エラール X ワイヤーアート」を発売中~

2,320 本にも及ぶ25 ミクロンの純金ゴールドの糸による幾何学模様のダイアルを持つ「フィル・ドール ルイ・エラール X ワイヤーアート」を、「ルイ・エラール」メティエダール コレクションより発売中

マイクロエレクトロニクスの精密さが、アートへと昇華するとき。ルイ・エラールはその真価を発揮します ― 才能、職人技、そして大胆なアイデアに光を当てること。新作「フィル・ドール」はその結晶です。このモデルは、ワイヤーアートの創設者であるシルヴィ・ヴィラとマーク・ミールブラットとのコラボレーションによって誕生しました。彼らはエンジニアとしての訓練を受けながらも、信念によってアーティストへと歩みを進めました。

かつて彼らの機械はデジタル世界を結線していました。今、その機械は「時間」を結線するのです。これは単なる装飾ではありません。新たなアートクラフトの誕生です。「フィル・ドール」は、クラフツマンシップと革新を「黄金の糸」でつなぎ合わせた作品です。

WIRE ART・SYLVIE VILLA × MARK MIEHLBRADT(シルヴィ・ヴィラとマーク・ミールブラット)
2017 年、シルヴィ・ヴィラとマーク・ミールブラットによって創設された Wire Art Switzerland。彼らはクラフツマンシップの未来を「再配線」する存在です。スイス・マイクロメカニクスの中心地、サントクロワの高地にある工房は、家族の古い農家を修復して生まれたもの。そこで、ミクロエンジニアリングと芸術的再創造が出会います。
ミクロテクノロジーとマイクロエレクトロニクスを専門とするエンジニアである二人は、かつてデジタル世界を「結線」していたワイヤーボンディングマシンに新たな命を吹き込みました。時代遅れとなり、沈黙に向かうはずだった機械たち。Wire Art はそれらに新しい目的を与えました。

 24K ゴールドの糸を織り込み、純粋なビジュアルアートへと昇華させること。彼らの特許技術は、マイクロソルダリングを芸術へと変換します。髪の毛よりも細い金線を織り込み、緻密なパターン、幾何学的な錯視、そして光を放つテクスチャーを生み出すのです。産業がスピードを追い求める時代にあって、シルヴィとマークはあえて時間をかけ、無二のパターンが織りなす光の戯れを果てしなく追求し続けています。

「すべてのルイ・エラールのコラボレーションは、出会いから始まります。シルヴィとマークとの出会いもまた、黄金の糸に導かれ、大胆な発想で結ばれました。半導体技術のための機械を、金のマイクロ彫刻の道具へと変えるというアイデアです。そして私たちは彼らに挑戦を課しました ― 独占的にとどめるのではなく、誰もが手にできる作品へと昇華させることを。シンプルな形、立方体。それはすでに当社のメティエダールの作品に存在するシグネチャー(ギヨシェ彫りや木象嵌)です。その結果生まれたのは、純金で描かれるトロンプルイユ(だまし絵)のような錯覚。しかし、このモデルはその名とは対照的に「真実」を語ります。プロセスも、道具も、人も――すべてを見せる。それが私たちのやり方です。」マニュエル・エムシュ

マイクロメカニカル刺繍:Wire Art Switzerland(スイス・サントクロワ)製作
黄金の糸:このダイヤルはプリントではなく「配線」されています。純金24K の糸を織り込み、太さはわずか25 ミクロン、人の髪の毛の3 分の1 の細さです。技術は特許を取得し、精緻かつ執念深いプロセス ― もとはマイクロエレクトロニクスの世界から借用したもの。機械は本来、マイクロ回路を結線するために設計されたものですが、いまやアートのための「ゴールドスレッド・ボンディングマシン」として再生されました。

デザインはルイ・エラールのシグネチャーである立方体。シェブロン模様が錯覚的な立体感を生み出します。スケッチからベクターコード、ラッカー仕上げの真鍮から金糸の彫刻へ ― 光と陰影が織り成す生きたダイヤルが誕生しました。

この芸術を手掛けたのは、Wire Art Switzerland の創設者、シルヴィ・ヴィラとマーク・ミールブラットです。
「フィル・ドール」はノワルモン・メティエダール・コレクションの一員として、39mm ステンレススティールケースに収められています。そのデザインは立方体というアナクロニズム的モチーフから構成され、2021 年のギヨシェ彫りダイヤル、2023 年の木象嵌ダイヤルに続く流れを示します。
それはルイ・エラールの使命 ― 希少なクラフツマンシップを広く届け、真価を損なうことなく accessible にする ―を改めて強調するものです。ルイ・エラールが常に信じてきた「手の届く卓越性」。フィル・ドールもその例外ではありません。
【技術概要】
・ブラックラッカー地に24K 硬化ゴールドの糸2,320 本、3,660 カ所の接点
・技術:再プログラムされた機械による特許取得済みマイクロボンディング
・ワイヤー:25 ミクロン(人の髪の毛の1/3 の細さ)、3 秒ごとに1 本配置
・デザイン:立方体モチーフ(ルイ・エラール メティエダールのシグネチャー。ギヨシェや木象嵌に通じる要素)
・効果:黄金のトロンプルイユ幾何学

糸とダイアル
マイクロソルダリング、マイクロメカニカル刺繍、漆地の上に施された金細工。
漆黒のラッカーダイヤルの上に、2,320 本の金糸がキューブ模様を描き、3,660 の接点がチャプターリング、インデックス、そして縁の陰影を形づくります。
一本一本のワイヤーを、顕微鏡下で引き出し、配置し、ハンダ付け。3 秒ごとに1本。45 分間、極度の集中と精緻な手仕事。抜け道は一切ありません。

地板には数千の微細なキャビティをレーザーで刻印し、電解メッキで金を満たします。すべての糸、すべての接点は2Dデジタル設計に基づき配置され、高さはミクロン単位で調整・校正されます。圧力、温度、溶接時間――すべてが制御され、偶然の余地はありません。機械が遂行し、人間の眼が指揮を執る。二つの知性の邂逅。技術の信頼性と美の完璧さが、そこに結実します。

糸はレーザーで刻まれたアンカーポイントから始まり、計算し尽くされた経路を横切り、もう一つの金で縁取られたキャビティに終着します。すべての接点は再プログラムされたボンディングマシンでマイクロソルダリング。まさにミクロの金刺繍です。糸と隆起が織りなすのはアイソメトリック・キューブを想起させるモチーフ。光と影が戯れ、手首の上で錯覚的な造形を生み出します。しかし金は嘘をつきません。素材は24K 純金。なぜその選択か?それは合金化されていない金だけが、加工時に柔らかく延性に富み、仕上げ後は硬化して形を保つからです。すべてのダイヤルは、スイス時計微細機械工学発祥の地サントクロワのWire Art Switzerland によって製作されています。
このダイヤルには新たな針が与えられました。ロジウムメッキ仕上げ、天面はサテンブラッシュ、角はダイヤモンドポリッシュ。堂々たるソード型。そしてルイ・エラールを象徴するベージュレザーのストラップ。
合計で229,680 本の金糸が、99 本の限定タイムピースに織り込まれています。

「私たちは訓練ではエンジニア、選択では職人です。もともと半導体を結線するために造られた機械が、今は金を刺繍します。糸一本ずつ、ダイヤル一枚ずつ。ルイ・エラールとの協働は最初から率直で、深く双方向的でした。彼らは単なるダイヤルを求めたのではなく、理解を、参加を、プロセスの一員となることを望みました。制約を与えられたことで、私たちはさらに高みに挑むことができました。そして何より、供給者としてではなく、対等なパートナーとして、職人として認められること。それがすべてを変えました。長年、影の中で培った技術、機械、使命を光の下へと導くものです。」

レデラーがドバイ ウォッチ ウィークにて、CIC39の新しいクリエーション、InVerto Tataniumを発表しました。

InVerto(インベルト?)はレデラーの出身地であるドイツ語で逆転のような意味で、英語のinvertに相当、そのまま「反転」という意味でしょうか。

ステンレススティールケースのトリプルサーティファイドオブザバトリークロノメーターと同様に実用金属のグレード5チタンケースに納めました。

スーパーコピー時計の本来はグラスバックに相当するドーム状の風防によってムーブメント・歯車・スプリング・そして2つのルモントワールとセントラルインパルスクロノメーター脱進機が遮られることなく眺めることができます。
このドームはレデラーが理想とする有機的な連続曲面になるよう手作業で仕上げられ、ケースまでを内製することができるレデラー社の技術力の証明でもあります。

セントラルインパルスクロノメーター脱進機は完全に独立した2つの輪列で駆動される2つのガンギ車が1つのアンクルで制御され、それぞれの回転方向の衝撃を独立して与える構造です、安全のために「捨てる」エネルギーを最小に抑えており、反転した回転を作るための伝え車もない「独立」両方向駆動脱進機、としています。

ベルナルド・レデラーとしては、師として仰ぐジョージ・ダニエルズの両方向「独立」直接駆動脱進機同様、2つの輪列から効率よくエネルギーを与えることが高効率のためには最も重要であり、「両方向」「直接駆動」であっても1つの輪列から1:1の反転車で逆回転を作るような設計は望ましくない、と考えていることは以前のインタビューで伺いました。

この構造の副産物として、2つの輪列からは速度は同じで回転方向が逆の回転が常にペアで取り出すことができます。
この性質を活かすことで、運針の回転方向を逆にするための反転輪列を不要とし、ほぼ追加パーツなしで反転構造を実現できているのは44mmと同様です。

テンワを支えるブリッジのセンターに時分針が取り付けられています。
古典的なコハゼと片方の香箱の巻き上げ方向を逆にするための反転車がデザインのアクセントななっています。
ルモントワールのブロックレバーも見えます。

44mmのInVerto同様、向かって時計回りに回転するスモールセコンドはケースバック側に配置されています。
今更気が付きましたが、反転構造によって本来は反時計回りになっている側がケースバック側から見ると時計回りになっている、というのはユニークです。

ケースバックにはルモントワールと脱進機・テンワを意匠化したエングレーブが施されているのもユニークです。

44mmに時に「このデザインでは二針にした方が良かったのでは?」と質問したところ、「CICの全数で通しているCOSC(クロノメーター検定)のためには秒針が必須、確かにInVertoではデザイン上邪魔になるので裏に付けた」との回答が。

仕上げの難しいチタンを選び、貴金属ケース同様の仕上げを行い、美しいケースを実現する事はレデラーの誇る工房が無ければ不可能だったと語られています。
ムーブメント部品の98%、ケースまで内製するマニュファクチュールの力があってこそ作り上げることができたものでしょう。

反転に合わせて各部が再設計されたムーブメントには新しいキャリバー9019というという名前が与えられ、2つのルモントワールとセントラルインパルスクロノメーター脱進機のリズムを刻みます。

限定数は定められていませんが、「極めて少数」の生産になるとされているInVerto 39mm チタニウム、これのためにドバイに行くべきだったか…と思えるような力作です。

来年には時計師として40周年を迎えるベルナルド・レデラー、この作品も実機を見てみたい!

『シチズンコレクション』が名作SF 映画『E.T.』をモチーフにしたメカニカルウオッチを製作~

1982年に日本で公開された名作『E.T.』。その魅力を『シチズンコレクション』の中で人気が高いメカニカルウオッチをベースに盛り込んだ限定モデルが発売されました。

1982 年12月4日に日本で初めて公開された、名作SF 映画『E.T.』をモチーフにした限定モデル。『シチズンコレクション』で人気が高いメカニカルモデルをベースにした、オープンハート仕様。

主人公「エリオット」が自転車のかごに「E.T.」を乗せて、満月の夜空を翔ける名シーンを文字板に表現。インクジェット技術を活かして、月のディテールまで丹念に描写。

ダークグレーのケースにブルーの文字板を合わせたスタイリッシュな配色。深いブルーの見返しリングで、夜空のイメージが引き立ちます。

ロゴ入りの特別なデザインを採用した限定ボックス付き。限定カードにも、文字板と同じシーンを描きました。

·シースルーバックの裏ぶたから回転錘やメカの動きをご覧になれます。

【概要】
シチズンコレクションE.T.限定モデル
品番:NH9144-55L
価格:69,300円(税抜価格63,000円)
限定:350本
発売日:12月4日

ケース:ステンレス
・ケース径/厚み:38.9mm/11.2mm(設計値)
・防水性能:10気圧
バンド:ステンレス

※Universal Studios Licensing LLC (ユニバーサル·スタジオ·ライセンシング LLC)との商品化契約に基づき、シチズン時計株式会社が企画·制作した商品です。

【お問い合わせ】
シチズンお客様時計相談室
フリーダイヤル0120-78-4807
(受付時間9:30〜17:30 祝⽇除く月〜⾦)

グランドセイコースーパーコピーは再び、自然からインスピレーションを得た限定モデルを発表。

本作は、1998年にデビューしたキャリバー9Sのアニバーサリーモデルである。1998年に発表された初代キャリバー9Sは、機械式時計の精度を追求するブランドとして、グランドセイコーの新たな時代の幕開けを告げるものであり、その初代9Sと同じケースデザインを採用したのがこれらのSBGH311とSBGR325だ。どちらも37mmのステンレスケースを採用し、厚さは13.3mm。SBGHは毎時3万6000振動のハイビートキャリバーである9S85、SBGR325はCal.9S65を採用する。グランドセイコーらしい美しい文字盤が特徴で、それぞれ1200本の限定生産だ。

普通の人が自然を求める場合は公園に行くことが多いだろう。グランドセイコーの場合は、期待を裏切らずにこのキャリバー9S 25周年記念モデルによってそれを満たした。どちらの文字盤も、岩手山上空のイメージを用いており、SBGH311は岩手山を覆う雲海をイメージした質感と色合いのシルバーダイヤルを採用。一方で、SBGR325は岩手山の頂上から見た澄んだ空をイメージしたサンレイ仕上げのライトブルーダイヤルで、山頂に登ることを想像するだけで疲れてしまうという方におすすめできる。

我々の考え
グランドセイコーの新作は、どれもこれも格好よくなければこれほど取り上げることはないだろう。このSBGH311とSBGR325は、雲をつかむような自然なインスピレーションとアニバーサリーセレブレーションという事実を抜きにして、グランドセイコーのベストを示したふたつの時計のように見える。興味深い質感の文字盤、正確に時を刻むムーブメント、そして今回は(オリジナルの9Sに回帰して)37mmのスレンダーなケースの採用。
シルバーのSBGH311はグランドセイコーのトレードマークである、ダイヤルの微妙な質感を表現する能力が発揮されより面白いけれど価格も88万円と少し高価だ。一方、よりシンプルなサンレイ仕上げのSBGR325は70万4000円(9S65を使用しているため)となっている(価格はすべて税込)。グランドセイコーの自動巻きモデルとしては、どちらも手ごろな価格帯と言える。ローターに化学処理で青い酸化膜(SBGH311は淡いブルー、SBGR325は濃いブルー)を形成しているほかは、それぞれ9S85、9S65という一般的なムーブメントを搭載しているからだ。

グランドセイコーの過去のリリースを振り返ってみると、最近の新作の多くが、いかにマニアや顧客を魅了する、ニーズを捉えたものであったかに気づかされる。個人的には、昨年のSBGW289 44GSアニバーサリーエディションのソフトピンクの文字盤がお気に入りだが、36.5mmケースと歴史的な44GSケースを忠実に再現した44GSはどれも勝者だと言える(特に限定でない場合は!)。 昨年末に発表された新作「御神渡り」も、ブランドのよく知られた雪のモチーフをより小さなケースサイズにしたもので、ファンにはたまらないものであった。 あのピンクのSBGW289は、もしかしたら私が思うほど人気ではなかったかもしれないが、それはそれでいいのだ。
グランドセイコーは実に多くの時計を世に送り出している。しかし、他のブランドとは異なり、最終的にはすべての愛好家を満足させるかもしれないダイヤルとケースの組み合わせを見つけることに熱心であるように思える。なぜなら、(1)1200本というのはそれほど限定的ではないこと、(2)このモデルが手に入らなかったとしても、次のモデルのリリースは決して遠くはないこと、などが考えられるからである。

基本情報
ブランド: グランドセイコー(Grand Seiko)
モデル名: キャリバー9S 25周年記念限定エディション(Caliber 9S 25th Anniversary Limited Editions)
型番: SBGH311、SBGR325

直径: 37mm
厚み: 13.3mm
ケース素材: ステンレススティール
文字盤色: シルバー (SBGH311) 、ブルー (SBGR325)
防水性: 100m
ストラップ/ブレスレット: スティールブレスレット、プッシュボタン式3つ折りクラスプ

Cal.9S85を搭載したSBGH311のケースバック。

ムーブメント情報
キャリバー: Cal.9S85 (SBGH311) 、Cal.9S65 (SBGR325)
機能: 時、分、日付表示
直径: 28mm
パワーリザーブ: 55時間(9S85)、72時間(9S65)
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 3万6000振動/時 (9S85) 、2万8800振動/時(9S65)
石数: 37、35
精度: 日差+8〜-1秒 、日差+10 to -1秒

価格 & 発売情報
価格: SBGH311: $6,600、SBGR325: $5,300
限定: それぞれ世界限定1200本
発売: SBGH311 2023年1月にグランドセイコーブティックオンライン限定で発売し、2023年2月にグランドセイコーブティックと世界中の一部の小売パートナーで販売します。SBGR325」は、2023年4月にグランドセイコーブティックと世界の一部の小売店で販売される予定です。

タグ・ホイヤーは長らく、時計史における象徴的なブランドという重荷を背負ってきた。

タグ・ホイヤーがヴィンテージインスパイアのカテゴリから飛び出した試みをするときほど、時計界で意見が分かれることはないだろう。

とある事例を紹介しよう。数週間前、タグ・ホイヤーは新しいタグ・ホイヤー モンツァ フライバック クロノメーターを発表した。HODINKEEエディターのふたりは、テキストとビデオの両方でタグ・チーム(もちろんタッグチームの洒落だ)の紹介をするほど素晴らしいと感じたようだが、コメント欄は期待はずれという意見がほとんどだった。
タグ・ホイヤー モンツァ キャリバー ホイヤー02 フライバック クロノメーターの新作があまりにもクールなので、エディター2人がかりでレビュー!(動画解説付き)

数週間前に発表されたトニー・トレイナとブランドン・メナンシオのコメントもチェックして欲しい。
42mmの美しくうねるようなカーボンケースに、DLCコーティングのプッシャーとリューズだって? あくびが出る。クロノメーター認定の自社製フライバッククロノグラフ? 何かおもしろいことがあったら起こしてくれ。赤と青のアクセントに半透明のサブダイヤル、スーパールミノバをふんだんに使った超クールなスケルトンダイヤルだ? ありえないだろ。私には無理だ。
タグ・ホイヤーはマニアにとって、歴史的な時計のロマンと深く結びついているブランドだ。しかし、その同じマニアから、ヒット作の復刻だけをしていて欲しい、さもなければ炎上して欲しい、とまで思われているブランドはほかにないだろう。それは、このブランドのヒット作があまりに素晴らしいことに加え、長年にわたって復刻版でかなり素晴らしい仕事をしてきたからかもしれない。しかし、それでもすべての人を満足させることはできない。確かに、多くの人がカレラ Ref.2447の36mmリメイクを望むように、私もダークロードの精巧なリメイク(ローズゴールド以外)を見てみたいと思っている。しかし、タグ・ホイヤーがカレラ、オータヴィア、モナコといった“古きよき時計”を復活させたとしても、カレラの60周年記念モデル(それ自体が驚愕に値する時計だ)に対するコメントのように、39mmは小さすぎるという声が上がることだろう。

そう、これは皆さんがよくご存じのホイヤーの姿だろう。しかし、タグ・ホイヤーが得意とする分野は、それだけではない。Photo by Mark Kauzlarich
だからこそ、仮にそれが人々を即座に満足させるものでなかったとしても、タグ・ホイヤーがこれまでに発表してきた方針については称賛する価値があると思う。すべての時計が自分のために作られるわけではないことを、どうか忘れないで欲しい。さらに興味深いことに、タグ・ホイヤーには過去に目を向けてデザインするチームと、未来を見据えてマリオカート トゥールビヨンのような破天荒な時計を作るチームがあるように見受けられる。奇抜なデザインの時計はしばしば非難の対象となるが、このような未来志向のモデルの実機を見たことがある人はそれほど多くはないだろう。つまり、私はこう言いたいのだ。新しいモンツァは、わかったつもりになっていた自分を見つめ直すチャンスが与えられるほどに刺激的だと。
 私は懐中時計など古きよき時計の愛好家、その古株中の古株であるがゆえに、これまでカーボンケースの時計には納得がいっていなかった。愛好家の多くは、耐久性や高級感を、重厚感や“手首上での存在感”と同一視している。しかし、チタンと同様に、カーボンがそれらの感覚を満足させてくれることはない。水に浮くリシャール・ミルに慣れ親しんだ人なら、カーボンファイバーの軽さをラグジュアリーだと感じるだろう。だが、私たち一般人にとっては根強い先入観を打ち砕く必要があるのだ。そこで私は、この新しいモンツァを腕に巻いてみることをすすめたい。

少々厚みがあるが、カーボンの軽さがバランスを取っている。
多くの人にとって、167万2000円という金額は50万ドル(約6600万円)と同じくらいピンとこないものだ。そこで、私はこのふたつの金額をあえて区別せず、新しいモンツァはその何倍もの価格をつけられた最先端ブランドの特徴をすべて備えている……、と荒唐無稽な発想に出てみようと思う。確かに厚みは約16mmとかなりのものだ。しかし、ケースの厚みは白か黒か、正しいか正しくないかという話ではない。サイズに重量、装着時のバランスなど、総合的な判断が必要だろう。この時計の場合、素材感に加え、背の高さに対して手首にフラットに収まるようにデザインされたケースなど、すべてがバランスよく収まっている。そして、軽さをラグジュアリーと捉えるならば、この時計は宇宙でも通用するラグジュアリーさを備えていることになる。リシャール・ミルのRM-11が16mmという厚さで許されたのなら、このモンツァもそうだろう。

寸法はさておき、トニーが紹介記事で指摘したように、このケースは仕上げにおいて最高のパフォーマンスを発揮している。多くのカーボンファイバーが繊維質であるのに対し、このモンツァは軽量でありながらその表面はなめらかで官能的だ。魅惑的なスケルトンダイヤルに、鮮やかなブルーのスーパールミノバインデックス、半透明のインダイヤル、そして赤・白・青の針が、このモデルをスポーツカテゴリへと力強く押し上げている。このモンツァは、停止しているにもかかわらず疾走感を漂わせるクルマのようなものだ。

スポーティさを損なっている唯一のポイントは、比較的重厚な、COSC認定を受けたフライバッククロノグラフのCal.02を搭載していることだ。このムーブメントは、ローガン・ベイカーが繰り返し絶賛してきた傑作である。2022年に復刻されたよりトラディショナルなモデルである、オータヴィアから受け継いだフライバッククロノメーターを使用していることは、技術的に大変素晴らしいことだ。しかし、文字盤側の仕上げを一部強化した以外は、ムーブメントそのものをスケルトンにして軽量化し、未来志向の訴求を後押ししようなどという努力は見受けられなかった。

だが私は、過去の遺産がもたらす成功と先進的な試みが共存しつつ、ともに発展していく未来への希望を感じている。なにぶん、若きフレデリック・アルノー氏が指揮を執り、レッドブル フォーミュラ1チームの大口スポンサーとなったのだから、期待せずにはいられないのだ。タグ・ホイヤーが過去の名作をリメイクするのは楽しいことかもしれない。だが、それは1960年代の1.5L F1エンジンに固執するようなもので、現代のテクノロジーにとっては大きな足かせとなるはずである。
 アルノーとそのチームがイノベーションのためのスロットルを回し続け、新タグ・ホイヤーのスタイルをどこまで進化させられるか、注目している。

H.モーザーがふたつの新しいパイオニアモデルを発表した。

先月末に、複雑機構を搭載したタンタルケースモデルを発表したばかりのH.モーザーが、より小振りな40mm×12mmのスティールケースを採用した、ふたつの新しいパイオニアモデルを発表した。1分に1回転するワンミニッツ トゥールビヨンとセンターセコンドの2モデルで展開し、アークティックブルーフュメ文字盤を備える。これは文字盤外周の濃いブルーが中央にかけて明るく変化するが、印象的なサンバーストパターンもあるため光によって色も変化していく。

新しい40mmサイズのSSケースを採用した、H.モーザー パイオニア・トゥールビヨン。
これらの文字盤には、光と影の陰影を演出するべく傾斜を設けた、砲弾型のインデックスを採用することで文字盤とのコントラストを高めている。さらにスーパールミノバ®でできたアワーリングにあるドットが、リーフ型の時針の夜光とマッチ。6時位置にあるブランドロゴは透明なラッカーで描かれており、サンバーストパターンに反射した光が入る角度からしか見ることができない。

しかし本当に驚くべきディテールはケースサイズだ。従来のパイオニアと同じムーブメントを搭載しつつ、シャープなラグと、ミドルケースに一部施された刻みを持つ独特なシェイプはそのままに、ケースサイズが3mm近く(こだわるなら2.8mmだ)も小さくなっている。しかも120mの防水性能を備えており、モーザーのなかで最もスポーツ志向の高い時計に仕上げられたのだ。

H.モーザー パイオニア・センター セコンドと同様のムーブメント、HMC200を搭載。

H.モーザー パイオニア・センター セコンドのケースサイドとリューズ。
トゥールビヨンモデルには、H.モーザーの姉妹会社であるプレシジョンエンジニアリング社が自社で設計、製造した自動巻きCal.HMC 804を搭載。また、ダブルヘアスプリングを搭載して精度向上を図ったほか、トゥールビヨンは交換可能なモジュール式であり、ムーブメントと別に組み立てられたあとに調整されるため、メンテナンスのダウンタイムを短縮することができる。センターセコンドモデルには、ブリッジと地板にH.モーザーの特徴であるダブルストライプを施した、自社製自動巻きムーブメントのCal.HMC 200を搭載。どちらのムーブメントも、最低3日間のパワーリザーブを確保している。

Cal.HMC 804は、自動巻きのマニュファクチュール トゥールビヨン ムーブメントである。
なおどちらのモデルにも、ラバー、テキスタイル、レザーストラップ、そして(いちばんスポーティに見えるよう)SSブレスレットが付属。センターセコンドモデルは202万4000円(税込)、トゥールビヨンモデルは783万2000円(税込)となっている。
我々の考え
ちょうど1年前、私がスイスの偉大な時計職人の知られざるストーリーを追い求めてスイスに滞在し、H.モーザーのオーナーであり、その時計職人の親戚でもあるメイラン一家とともに過ごしていたときのことだ。私の旅のお供として、マッドレッドのフュメ文字盤が美しい、H.モーザー パイオニア・センター セコンドを連れていた。しかし愛情を注いでいた割にこの時計は43mmで大きすぎた。CEOのエドゥアルド・メイラン(Edouard Meylan)氏にその事実をぶつけたことがある。

H.モーザー パイオニア・トゥールビヨン、SSでできた40mmを腕に乗せた。
メイラン氏は“できない”とは言わなかったが、このムーブメントのケースを小さくするのは大変なことだとは話していた。そして彼らはその要求に、確実に応えようともしてくれていた。私の好みとしては、パイオニアの新モデルは40mmでちょうどいい。
 ブランドにとっては文字盤が問題になることはない。このアークティックブルーフュメのサンバーストパターンは大変素晴らしく、しかもブランドロゴの隠し方も相まって、私の見事なマッドレッドよりもさらによくなっていると思う。メイラン氏は、父親が持っていた懐中時計のコレクションからインスピレーションの一端を受けており、そして文字盤のロゴではなく、ウォッチメイキングこそが重要であると悟ったのだと話してくれた。針、インデックス、またムーブメントの仕上げは、この価格にふさわしいと感じる。しかしその前身である42.8mmのパイオニアを手にしていたとき、それを友人に渡してみると、大きすぎるという感想が挙げられた。そう、H.モーザーは120m防水というスポーティな時計を間違いなくつくったはずだったが、そのほかの小さな工夫が“スポーティさ”からほど遠く、あの大きさには違和感があり、しっくりとこなかったのだ。


ムーブメントHMC804に、新型の40mmSSケースを採用。

正面から見た場合。
この話を本格的なHands-Onにするのは避けたいが、この2本の選択肢は、手首とのバランスもよく、より快適に装着できるといえるだろう。むしろ、今のH.モーザーとはまったくの別物といってもいいくらいだ。これまでのファンの目から見ていちばんともいえるモデルだったとしても、この時計によってまったく新たな顧客へ訴求されるものにもなっていると思う。
 強いていえば、ラグのエッジはもう少し柔らかくして欲しかった。底面は美しいフラットな形状だったが、裏蓋付近のエッジはステーキを切り分けるのに十分なほど鋭い。それでもこの新しいパイオニアは、時計を身につけていることを忘れてしまうほど、美しい文字盤が光に照らされて輝き、持ち主を常にワクワクさせて、喜ばせてくれる時計であることに変わりはない。

ワンミニッツ トゥールビヨンのHMC804。

基本情報
ブランド: H.モーザー(H. Moser & Cie.)
モデル名: パイオニア・センター セコンド アークティックブルー&パイオニア・トゥールビヨン アークティックブルー
型番: 3200-1217(センター セコンド)、3804-1208(トゥールビヨン)

直径: ともに40mm
厚さ: 10.4mm(サファイアクリスタルなし)、 12mm(サファイアクリスタルあり)
ケース素材: ステンレススティール
文字盤: ともにサンバーストパターンを施したアークティックブルーのフュメ
インデックス: 砲弾型インデックス、夜光付きアワーマーカー
夜光: リーフ型時・分針、アワーマーカーにスーパールミノバ®を採用
防水性能: 120m
ストラップ/ブレスレット: 手縫いのアリゲーターレザー、ラバー、テキスタイルストラップ、またはSS製ブレス。H.モーザーのロゴが刻印されたSS製バックル付きストラップ。

ムーブメント情報
キャリバー: HMC 200(センター セコンド)、HMC 804(トゥールビヨン)
機能: 時・分・秒(センター セコンド)、時・分・トゥールビヨン(トゥールビヨン)
直径: ともに32mm
厚み: ともに5.5mm
パワーリザーブ: ともに約3日間
巻き上げ方式: ともに自動巻き
振動数: ともに2万1600振動/時
石数: 27(センター セコンド)、28(トゥールビヨン)
追加情報: 1分に1回転するフライングトゥールビヨン

価格 & 発売時期
価格: 202万4000円(センターセコンド)、783万2000円(トゥールビヨン)。ともに税込

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