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タグ・ホイヤーは長らく、時計史における象徴的なブランドという重荷を背負ってきた。

タグ・ホイヤーがヴィンテージインスパイアのカテゴリから飛び出した試みをするときほど、時計界で意見が分かれることはないだろう。

とある事例を紹介しよう。数週間前、タグ・ホイヤーは新しいタグ・ホイヤー モンツァ フライバック クロノメーターを発表した。HODINKEEエディターのふたりは、テキストとビデオの両方でタグ・チーム(もちろんタッグチームの洒落だ)の紹介をするほど素晴らしいと感じたようだが、コメント欄は期待はずれという意見がほとんどだった。
タグ・ホイヤー モンツァ キャリバー ホイヤー02 フライバック クロノメーターの新作があまりにもクールなので、エディター2人がかりでレビュー!(動画解説付き)

数週間前に発表されたトニー・トレイナとブランドン・メナンシオのコメントもチェックして欲しい。
42mmの美しくうねるようなカーボンケースに、DLCコーティングのプッシャーとリューズだって? あくびが出る。クロノメーター認定の自社製フライバッククロノグラフ? 何かおもしろいことがあったら起こしてくれ。赤と青のアクセントに半透明のサブダイヤル、スーパールミノバをふんだんに使った超クールなスケルトンダイヤルだ? ありえないだろ。私には無理だ。
タグ・ホイヤーはマニアにとって、歴史的な時計のロマンと深く結びついているブランドだ。しかし、その同じマニアから、ヒット作の復刻だけをしていて欲しい、さもなければ炎上して欲しい、とまで思われているブランドはほかにないだろう。それは、このブランドのヒット作があまりに素晴らしいことに加え、長年にわたって復刻版でかなり素晴らしい仕事をしてきたからかもしれない。しかし、それでもすべての人を満足させることはできない。確かに、多くの人がカレラ Ref.2447の36mmリメイクを望むように、私もダークロードの精巧なリメイク(ローズゴールド以外)を見てみたいと思っている。しかし、タグ・ホイヤーがカレラ、オータヴィア、モナコといった“古きよき時計”を復活させたとしても、カレラの60周年記念モデル(それ自体が驚愕に値する時計だ)に対するコメントのように、39mmは小さすぎるという声が上がることだろう。

そう、これは皆さんがよくご存じのホイヤーの姿だろう。しかし、タグ・ホイヤーが得意とする分野は、それだけではない。Photo by Mark Kauzlarich
だからこそ、仮にそれが人々を即座に満足させるものでなかったとしても、タグ・ホイヤーがこれまでに発表してきた方針については称賛する価値があると思う。すべての時計が自分のために作られるわけではないことを、どうか忘れないで欲しい。さらに興味深いことに、タグ・ホイヤーには過去に目を向けてデザインするチームと、未来を見据えてマリオカート トゥールビヨンのような破天荒な時計を作るチームがあるように見受けられる。奇抜なデザインの時計はしばしば非難の対象となるが、このような未来志向のモデルの実機を見たことがある人はそれほど多くはないだろう。つまり、私はこう言いたいのだ。新しいモンツァは、わかったつもりになっていた自分を見つめ直すチャンスが与えられるほどに刺激的だと。
 私は懐中時計など古きよき時計の愛好家、その古株中の古株であるがゆえに、これまでカーボンケースの時計には納得がいっていなかった。愛好家の多くは、耐久性や高級感を、重厚感や“手首上での存在感”と同一視している。しかし、チタンと同様に、カーボンがそれらの感覚を満足させてくれることはない。水に浮くリシャール・ミルに慣れ親しんだ人なら、カーボンファイバーの軽さをラグジュアリーだと感じるだろう。だが、私たち一般人にとっては根強い先入観を打ち砕く必要があるのだ。そこで私は、この新しいモンツァを腕に巻いてみることをすすめたい。

少々厚みがあるが、カーボンの軽さがバランスを取っている。
多くの人にとって、167万2000円という金額は50万ドル(約6600万円)と同じくらいピンとこないものだ。そこで、私はこのふたつの金額をあえて区別せず、新しいモンツァはその何倍もの価格をつけられた最先端ブランドの特徴をすべて備えている……、と荒唐無稽な発想に出てみようと思う。確かに厚みは約16mmとかなりのものだ。しかし、ケースの厚みは白か黒か、正しいか正しくないかという話ではない。サイズに重量、装着時のバランスなど、総合的な判断が必要だろう。この時計の場合、素材感に加え、背の高さに対して手首にフラットに収まるようにデザインされたケースなど、すべてがバランスよく収まっている。そして、軽さをラグジュアリーと捉えるならば、この時計は宇宙でも通用するラグジュアリーさを備えていることになる。リシャール・ミルのRM-11が16mmという厚さで許されたのなら、このモンツァもそうだろう。

寸法はさておき、トニーが紹介記事で指摘したように、このケースは仕上げにおいて最高のパフォーマンスを発揮している。多くのカーボンファイバーが繊維質であるのに対し、このモンツァは軽量でありながらその表面はなめらかで官能的だ。魅惑的なスケルトンダイヤルに、鮮やかなブルーのスーパールミノバインデックス、半透明のインダイヤル、そして赤・白・青の針が、このモデルをスポーツカテゴリへと力強く押し上げている。このモンツァは、停止しているにもかかわらず疾走感を漂わせるクルマのようなものだ。

スポーティさを損なっている唯一のポイントは、比較的重厚な、COSC認定を受けたフライバッククロノグラフのCal.02を搭載していることだ。このムーブメントは、ローガン・ベイカーが繰り返し絶賛してきた傑作である。2022年に復刻されたよりトラディショナルなモデルである、オータヴィアから受け継いだフライバッククロノメーターを使用していることは、技術的に大変素晴らしいことだ。しかし、文字盤側の仕上げを一部強化した以外は、ムーブメントそのものをスケルトンにして軽量化し、未来志向の訴求を後押ししようなどという努力は見受けられなかった。

だが私は、過去の遺産がもたらす成功と先進的な試みが共存しつつ、ともに発展していく未来への希望を感じている。なにぶん、若きフレデリック・アルノー氏が指揮を執り、レッドブル フォーミュラ1チームの大口スポンサーとなったのだから、期待せずにはいられないのだ。タグ・ホイヤーが過去の名作をリメイクするのは楽しいことかもしれない。だが、それは1960年代の1.5L F1エンジンに固執するようなもので、現代のテクノロジーにとっては大きな足かせとなるはずである。
 アルノーとそのチームがイノベーションのためのスロットルを回し続け、新タグ・ホイヤーのスタイルをどこまで進化させられるか、注目している。

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